08 Oct 2018
ワクチンは、既存の病気・感染症を治療処置するための多くの医薬品と異なり、私たちの免疫系を刺激し、体内に侵入する微生物に対して抗体を産生するため、病気になる前に感染性病原体を破壊することができます。現在では、定期的な小児予防接種により、世界で最も致命的な身体障害性疾患のいくつかが多くの国で根絶されたも同然です。例えば、ポリオの症例数は 1988 年以来世界的に 99%減少しています1。
今日では 26 の病気に有効なワクチンがあり、120 種類を超える開発中の新製品のグローバルパイプラインには、発展途上国に重要な 60 種類のワクチンが含まれています2。現在の世界中のワクチン接種範囲は約 2~300万人の死亡を予防しています3が、ワクチン接種プログラムの範囲をさらに拡大できれば、さらに毎年 150 万人の命を救える可能性があります3。ユニセフによれば、約 5 人に 1 人の乳児が健康で保護された状態を保つのに必要な基本的なワクチン接種を受けていません4。遠隔地の人々のために人命を救うワクチンを取得するとともに、適切な輸送コールドチェーンを確保し、診療所・医療スタッフや設備へのアクセスを確立することはすべて、貧しい地域やアクセスしにくい地域における大きな課題です。
世界保健機構 (WHO) は全世界のワクチン市場が 2025 年までに1,000 億ドル規模になると予測しています2が、先進国世界の高所得国と発展途上世界の低中所得国との間には膨大な量と価値の分離が起きています。高所得国がワクチンの世界売上高の約 82% を占めています (これは主に、グラクソ・スミスクライン (GSK)、メルク・アンド・カンパニー (Merck & Co)、サノフィ (Sanofi)、ファイザー (PFE) という四大多国籍ワクチンメーカーによるもの) が、ワクチンの世界年間使用量ではわずか約 20% を占めているのに過ぎません。
このトップティアのメーカーは、最新技術を用いて開発したワクチンに対してプレミアム価格を要求しています。これらのワクチンは、それを買う余裕がある高収入国で市販されています。セカンドティアの低コスト大量生産メーカーには、発展途上国ワクチンの製造業者ネットワーク (DCVMN) 同盟メンバーである中南米、中東、アフリカ、アジア太平洋地域の 50 を超えるメーカーが含まれています。DCVMN 同盟のメーカーは、発展途上国に高品質で手頃な価格のワクチンの持続可能な供給を実現することを目指しています。
ユニセフ (UNICEFF) やパンアメリカン保健機関 (PAHO: Pan American Health Organization) などの政府機関は、低・中所得国に代わって DVMN 同盟のメーカーのバルクワクチンを購入しています。これは合計で、世界の年間ワクチン売上高の約 18% を占めますが、毎年世界規模で販売される用量数の約 80% を占めます。ユニセフは、世界の 5 歳未満の子供の 45% にワクチンを供給しており、2016 年には 25 億 6000万本のワクチンを 95 ヶ国で配布するために確保しました5。低コストの安全で有効なワクチンの安定供給は、最貧国の人々の救命予防薬へのアクセスを確保する上で非常に重要です。
ワクチンはそれ自体が無害な生物学的製剤です。ワクチンは、有害な細菌やウイルスの一部を模倣し、人体の免疫系を誘発して、外来性の感染菌として認識されるものを破壊するとともに、将来の攻撃に備えて、持続する記憶の生成も行います。ワクチン接種を受けた個人が、その後に生きた微生物に遭遇すると、その免疫系は高い抗体応答を示して、新たな感染を防止します。
ワクチンには、弱毒化した生きている形態の細菌やウイルス、もしくは不活性形態の微生物、または細菌性毒素の一部さえも含むことができます。ワクチンの生物学的成分は、発酵槽中、バイオリアクター中、または鶏卵中でさえも増殖する細菌細胞、酵母細胞、または哺乳動物細胞内で工業規模で製造されます。これは、いまだに季節性インフルエンザワクチンを製造する最も一般的な手法です。
ワクチンの単一バッチ製造には数カ月かかる可能性があります。任意のタイプのワクチンの製造工程では、混合、製剤、さらに場合によっては凍結乾燥段階と共に、発酵、分離、均一化を含む複数の段階を踏む必要があります。各段階は、工場から出荷されるワクチンの各用量の一貫性、安全性、有効性を確保するために、厳しい品質管理手順の対象となります。ワクチンのメーカーは、WHO (世界保健機構) などの規制機関による検査に合格しなければならないすべての設備、自動化、プロセス制御技術に多額の設備投資を行っています。ワクチンを個々の国内で販売するには、米国の FDA などの国家規制機関による追加の認可が必要です。
GEA は世界のワクチン産業の微生物・細胞発酵システムの設計・配置における世界的リーダーです。当社は、スタンドアロンのモジュラー技術を供給するだけでなく、エンドツーエンドのワクチン製造工場の設計、設置も行っております。当社の専門知識は、細胞培養システム、細胞分離装置、ホモジナイザー、ろ過装置ばかりでなく、製剤・凍結乾燥ソリューションにも投入されています。さらに当社は、廃棄物・排水処理のための生物学的不活化システムを供給、配置することができます。
GEA はワクチンに関連するあらゆるお客様と緊密な関係を持っています。当社は、世界最大の多国籍ワクチン企業のいくつかを、新工場の設計・設置、拡張、アップグレードを提供することによってサポートしています。また、当社は世界中の DCVMN 同盟のメーカーと提携して、低コストワクチンの安全で信頼性の高い製造をサポートしています。
GEA は、新興市場メーカーが地場産業から高品質で安全な工場にアクセスできない場合があることを理解しています。当社は、これらのメーカーと連携して、ワクチン製造分野における主要な工程、技術、エンジニアリングの専門知識を供給し、分離、凍結乾燥、発酵または細胞破裂に決定的な役割を果たす機器を供給します。当社の機器は、発展途上国のメーカーが自国で世界保健機構 (WHO) 認定のワクチン製造施設を構築し、数百万のワクチン用量を地域住民に提供できることを保証します。ワクチンを地元で生産することにより、コスト、輸送要件、コールドチェーン要件、カーボンフットプリントを削減できます。
また、GEA のノウハウは DCVMN 同盟のメーカーが、ワクチンのためのより効率的で収益性が高く持続可能な新しいグリーンフィールド施設を設計・設置し、将来の世代のために環境に優しい安全で価格が手頃なワクチンの製造を確保するのにも役立ちます。
一部のワクチンは単回投与だけで有効性が認められますが、他のワクチンは 2 回または 3 回の投与後 (時には数週間の間隔を置いて投与する必要がある) にのみ有効性が認められます。これは、医療インフラが確立しており、医療へのアクセスが制限されていない先進国では問題ではありません。しかしながら、反復投与の必要性は、散発的にしか訪れない可能性のある医者や他の医療提供者の診察を受けるために、患者が子供や乳児と一緒に数マイルも歩く必要があるような孤立した地域では、深刻な問題になる可能性があります。
同様に、一部の凍結乾燥ワクチンは周囲温度で安定している可能性がありますが、他の製剤は完全な輸送コールドチェーンを必要とします。これは遠隔地の大きな問題です。世界最大のワクチン購入者であるユニセフは、2017 年に 8,000 万ドルのコールドチェーン機器を調達6し、パートナーや政府と協働して効果的なコールドチェーンを確保しています。
GEA は、その製剤技術、凍結乾燥、噴霧乾燥作業におけるノウハウを、ワクチン開発者およびメーカーの専門知識と組み合わせて、ワクチンの製造と製剤の新規プロセスの開発を支援しています。当社の噴霧乾燥技術と凍結乾燥技術は、革新的なテクノロジー企業が、冷凍を必要とせずに有効期間が長くかつ困難な遠隔地へのより簡単な輸送が可能な温度安定性が高いワクチン製剤を開発するのに役立っています。
機器のスペシャリスト