30 May 2022
急速に拡大する世界人口に対応するために工業化された農耕技術により、食の安全性を維持するための課題はさらに増加しました。 また、旅行の増加などグローバル化の進展により、多様な食品に対する消費者のニーズも高まっています。その結果、複数の国境をまたぐ長い食品供給・輸送チェーンが形成され、農場から食卓まで食品の安全性を確保する取り組みにさらなるプレッシャーがかかるようになります。
食品は取り扱い、加工、輸送の過程において、いつでも汚染されるおそれがあります。異なる原料や成分を含む複雑なレシピで中間体や最終製品の製造を行う場合、複数の加工段階や工場間の輸送を経て、最終的に製品が包装された状態で店舗やレストランなどの消費者や家庭に届くことがありますが、これらもすべて潜在的な汚染源となり得るのです。さらに WHO によると、汚染防止の第一義的な責任は食品生産者にあるものの、食品の安全性確保には誰もが貢献でき、「政府、生産者、消費者の良好な連携が食品の安全性を確保するのに役立つ」とされています。
産業界の観点から見ると、乳製品や食品素材の粉末を製造する際に安全性を確保するためには、微生物の管理が大きなポイントになります。微生物やその他の物理的な汚染物質によって製品が汚染され、病気の原因になったり、味や粘り気、保存性などの製品特性や性質に悪影響がおよぶのを防ぐため、メーカーは厳しい規制とガイドラインを遵守して安全な食品の取り扱いと加工を実現する必要があります。
GEA の専門家は何十年にもわたり、粉乳の処理とハンドリングにおける重要な段階での汚染リスクを最小限に抑えるのに役立つ衛生的なコンポーネントや機器、スマートテクノロジーの設計・構成に取り組んできました。世界中の粉乳製造業者が高品質で安全、かつ栄養価の高い食品を消費者に届けることができるよう、短時間で細菌が最も繁殖しやすい温度以上まで急速に温度を上げることができる加熱システムから、安全なプラント運営のための監視・助言を行う専門サービスにいたるまで、当社の製品とノウハウがプロセスの保証に役立てられています。
例えば、乳児や成人向け粉ミルクの製造には以下のような複数の工程があり、潜在的な汚染のリスクポイントも複数存在します。
あらゆる段階において微生物による汚染を防ぐためには、衛生的で近代的なプラント設計と徹底した自動 CIP システムが重要となります。GEA では、もっとも一般的な加工中の危険な箇所にて汚染のリスクをさらに最小限に抑えるのに役立つプロセスセーフティの革新的コンセプト開発を先駆けて行っています。
蒸発を例に挙げてみましょう。蒸発とは乳製品の加工において、水分を除去して液状製品を濃縮し、固形分を増加させる段階です。一般的には、製品の保管やスプレードライヤーへの移し替えの前に実施されます。蒸発工程は通常、前処理加熱段階、熱処理、蒸発、分離、後処理段階を経て行われます。ただし、高温処理ではバクテリアを殺すことができるものの、低温処理では有害なバクテリア、つまり製品を汚染するバクテリアの繁殖を促進することになります。現在、乳製品の蒸発装置に使用されているプレート式熱交換器には、細菌の増殖や胞子形成に適した温度が維持されるゾーンが発生することがあります。そしてこの芽胞は、その後の低温殺菌でも生き残る可能性があるのです。
GEA ではこのような潜在的な細菌定着のリスクを回避するため、さまざまな種類の微生物の増殖や細菌の胞子形成を助長するおそれのある温度以上まで、急速に加熱可能な直接接触式予熱(DCP)システムを開発しました。また、GEA のシステムは製品と表面との接触が最小限になるよう設計されているため、バイオフィルムの発生や微生物繁殖のリスクがさらに減少します。例えば、当社の直接接触式予熱システムでは加熱段階で製品と表面がまったく接触しないため、問題となる温度範囲における微生物繁殖リスクを最小限に抑えることができます。
また、低温殺菌や高温加熱ソリューションも開発・提供しており、生産業者のプロセスや製品に合わせた最適なオプションをお届けするとともに、汚染リスクの最小化をサポートしています。例えば、当社の接線スワールヒーター技術では、液体に直接噴射した蒸気で製品が加熱されます。蒸気を直接噴射することにより、製品を焦がすことなく急速で安定した加熱が可能となるだけでなく、一部の表面で細菌の繁殖が助長されることもありません。
洗浄や点検のために手作業で機器の分解・組み立てを行う工程では、汚染のリスクが高まります。そのため、GEA では手作業を減らして安全性を高めるソリューションの開発にも取り組んでいます。当社が開発した食品・乳製品用スプレードライヤー向け非介入微粒子回復システム(FRS)は、特許取得済みのバルブを使用しているので、定置洗浄(CIP)前後の漏れや汚染のリスクがある箇所でも手動介入の必要性がありません。
また、GEA の専門家は取り外し可能なスプレードライヤー用断熱パネルという画期的な技術も開発。このパネルにより、細菌やその他の微生物が生息する可能性のある小さな亀裂がないか、スプレードライヤー室内を徹底的に点検できるようになりました。この GEA の技術が幅広く採用されているという事実は、食品・乳製品のスプレードライヤー工場において微生物安全性を確保する上で、この技術がいかに貴重であるかを示しています。
GEA は製品から細菌や芽胞、その他の汚染物質を物理的に除去する最先端の分離システムを提供しており、これらは乳製品の粉体処理工程において日常的に使用されています。GEA の遠心分離システムでは重力によって細菌や芽胞が沈殿し、GEA のセラミック精密ろ過装置では、特別に設計されたフィルターを通して微生物やその他の汚染物質がサイズ別に分離されます。
遠心分離システムやセラミック精密ろ過装置は、牛乳加工において、低温殺菌で処理できない耐熱性の細菌や芽胞を含む微生物の除去に理想的な方法です。 このような機械的技術をプロセスに組み込むことにより、高温処理は必要なくなるため、製品の栄養価を維持できるようになります。
プラント内の他の場所でも、製品加工の上流と下流にロボットシステムを導入すれば、原材料や原料の受け入れ時や充填・包装段階の手作業や介入が不要になります。多くの工業プロセスでは、粉末が入った袋を手で持ち上げて移動させ、ナイフで切り込みを入れて開封し、粉末を排出する必要があります。ただ、この方法には、作業者の安全と粉末汚染の可能性という潜在的な問題が存在します。こうしたリスクを軽減するため、GEA は人間の代わりに全自動でこの作業を実行できる、ロボット式 HYGiTip 袋開封・粉末排出システムを開発しました。
衛生的な25 kgの袋の全自動排出システムを備えた GEA の最新 HYGiTip(写真:GEA)
包装段階での袋詰めのために当社では Limited Intervention(LI)粉末充填技術を開発し、袋詰めから袋の密封にいたるまでの全工程を完全自動化しました。この LI システムでも充填時にオペレーターが袋に触れることができないため、製品の汚染リスクを低減できます。また、少量充填用には半自動粉末充填システム SmartFil M1 を開発。このシステムは密閉式充填ヘッドを使用できるようになっており、製品の汚染を防ぐとともに、オペレーターの安全性をサポートします。
GEA のセーフティシステムはお客様のプロセスに適合するように設計されており、食品の安全性、効率性、再現性をサポートしています。当社では、お客様のプロセスや製品に最適な安全ソリューションをオーダーメイドでご提供いたします。ここで重要なのは、当社は生産工程全体を考慮し、食品の安全性という観点から生産のあらゆる段階に対応できるようにしているという点です。当社の微生物学専門家と技術専門家が協力することにより、ケースバイケースでお客様に最適なソリューションをご提案させていただきます。
当社とお客様とのパートナーシップは、GEA のシステムが設置されたら終わりというわけではありません。お客様の全プロセスを完全に管理し、生産のモニタリングと最適化、特に食品の安全性を日々サポートする診断・コンサルティングサービスとして開発されたのが GEA SAFEXPERT® です。
この GEA SAFEXPERT® サービスを通じて、汚染防止に役立つメンテナンスと CIP 最適化のための推奨事項を含む、360度の完全ヘルスチェックとプラントに関するレポートをお届けします。GEA SAFEXPERT® 環境微生物モニタリングとバリデーションサービスでは、既存の汚染原因を診断し、除去のためのアプローチと将来の汚染防止案を確認することもできます。