08 Jul 2019
1kgの藻類バイオマスは、地球上の二酸化炭素の最重要消費者として、16kgの酸素を同時に放出しながら約2kgの二酸化炭素を保存することができます。この非常に重要な役割に加え、藻類の用途は、歯磨きペースト、靴磨き剤、顔用クリーム、家畜飼料、食品、食品サプリメント、天然食品着色料、バイオ肥料、土壌調整剤、廃水処理用、重金属の結合剤など多岐に渡っています。用途は今後も拡大していくはずです。
藻類は海水生か淡水生のいずれかの形態で存在しており、サイズ(大型藻類、微細藻類)と色(青、緑、茶、赤)に合わせてさらに分類されます大型藻類には、昆布類や海藻類など最長50mまで成長する大型の水生植物が含まれます。微細藻類には、クロレラやスピルリナなどが含まれます。
栽培した水から藻類バイオマスを分離するには加工または採取が必要になります。これは、1960年代から GEA が藻類の濃縮、抽出、洗浄、乾燥の技術を駆使して取り組んできた分野です。
藻類は栄養面で非常に優れています。例えば鮭などの魚類には効果的なオメガ3魚油が含まれていますが、これは自然に生成されるものではなく、微細藻類の消費を通じて生成されます。つまり、藻類油は世界の栄養ニーズに対応できる可能性も秘めており、例えば魚肉への使用を拡大できるなど、世界の魚供給の負担を軽減するのに役立つ可能性があります。同様に、信頼性の高い持続可能な低コストのエネルギー源と生分解性プラスチックに対する需要の増加は、この刺激的な業界の成長を促すことが期待される重要な要因となります。
最新の藻類加工では、収穫した藻類の懸濁液の濃縮、抽出、洗浄のために遠心分離技術が必要です。藻類の生物学的構成により、遠心分離機は多くの場合、微細藻類を効率的に処理するための単なる経済的手段にすぎません。それは、遠心分離機の消費エネルギーがセラミック膜ろ過よりも少ないだけでなく、従来の回転真空フィルターでは細胞のサイズによって結合や閉塞が生じるためです。
とは言え、遠心分離機は、遠心力を利用して藻類に最大15,000重力加速度の負荷をかけながらも、生きている状態を維持できるという優れものです。この処理には、遠心分離機への細胞の投入とその後の細胞の取り出しという2つの重要な手順があります。GEA は数年前に独自の水中フィードシステムを開発して(特許取得済み)、回転システムに感受性細胞を投入する際の問題を解決しました。この水中給餌システムの給餌管の先にはディスクが付いており、液体が入っているボールに細胞を液面下まで沈めることができます。これは、バケツに水を入れる際に、ホースをバケツの水面下に沈めた状態で水を注いだ場合と同じ、液体が飛散しないという効果が得られます。
刃物に極端に弱い細胞(珪藻やハプト藻など)はシステムの回転速度を下げても細胞の死滅率が90%を越えることがあったのですが、GEA は最近、このような細胞を傷つけず壊さないように回転システムから取り出せる待望のソリューションを開発しました。大半の加工生成物が悪影響を受けることなく手荒な処理に耐えられるので、通常の排出時でも、ボールが全速または減速で稼働している状態でボールを開けると、集まった固体物がシンプルにキャッチャーに入っていきます。
藻類の場合、遠心分離機の作動中に細胞が集結し、ボールの外縁の固形物保持スペース(遠心分離機の中で遠心力が最高になる場所)で回収されます。GEA のソリューションの鍵は、排出時に固形物の移動速度を下げる方法を見つけることでした。排出時には細胞がキャッチャー壁面に衝突するので速度を下げる必要があったためです。このことがGEA 水力ブレーキアシスト排出システムの開発につながったのです。このブレーキアシストは、固形物が排出される液体のカーテンとして機能します。一連のスプレーノズルをキャッチャーに取り付けることで生み出される機能で、ピストンが作動するとすぐに制御システムによってノズルが作動し、流体のカーテンがキャッチャーに吹き付けられ、これによって固形物の排出速度が十分に下げられます。使用する流体は通常は水ですが、上澄みも使用できます。2回目のピストン作動時にはノズルからの噴霧が短縮されるため、濃縮された藻類の再希釈の発生を緩和することができます。
液流パターンを示した GEA セパレーター(排出システムを含む)の断面図。
2018年、医薬品や機能性物質への使用を目的として海洋資源の天然産物の研究と開発を行っている日本のオーピーバイオファクトリーが、GEA の新しい水力ブレーキの使用を開始しました。従来の排出システムでは、排出時に藻類細胞の95%が破壊されていました。この新しいアシスト機能によって、藻類細胞の損失がわずか2%まで下がっており、コスト面と効率面が大幅に改善されたのです。したがってオーピーバイオファクトリーでは現在、最も繊細な藻類細胞も遠心分離機で処理できるようになっています。
藻類産業の新興企業と既存企業にとって、実験段階から試験段階に移行するための鍵は資金調達です。投資家は一般的に、対象の技術が小規模で機能すること、あるいは、数トンの藻類バイオマスまたは数ガロンの藻類油を生産できるように技術の規模を拡大できることを示す証拠を事前に要求します。藻類の生産と加工の規模を拡大するための重要な要素は、エネルギー消費量と操業コストの削減です。
GEA は2015年以降、フランスのバイオ技術新興企業を現場分離実験の段階から支援しています。協力を通じて、GEA はカスタマイズされた藻類収穫プロセスの開発を支援しました。このプロセスでは、家畜栄養、食品、化粧品への使用を目的として、高品質のバイオマス微細藻類を産業規模で生産します。例えば、従属栄養性の微細藻類の分離には GEA viscon® ノズルセパレータが使用されており、高い分離効率を確保するために CIP 完全対応マシンを使用すれば、乾物を最も多く含む均一の藻濃縮物が得られます。
ドイツ企業 Duplaco も GEA の分離ノウハウを利用して、従属栄養発酵により栽培された微細藻類クロレラを加工しています。このクロレラは、スムージー、藻類バーガー、藻類パスタなどの健康食品の製造ほか、食品サプリメントや家畜飼料にも使用できます。GEA ソリューションは、Dulpaco の藻類粉末と食品サプリメントの一貫した高品質と、生産者のエネルギーコストと生産フットプリントの最小化の実現に役立ちます。
- GEA 再生可能エネルギー/藻類/分離部門の応用担当管理者アレクサンダー・ピーク
持続可能な食品生産に対応した藻類精製の分野の成長は、GEA と、EU の科学・ビジネスコミュニティの複数の提携先の関心を引き付け、2016年には Sustainable Algae Biorefinery for Agriculture and Aquaculture(SABANA:農業・水産養殖業向けの持続可能な藻類バイオ精製所)プロジェクトが発足されました。EU 出資の Horizon 2020 イニシアチブでは、チームが、飼料と飼料添加物(バイオスティミュラント、バイオ肥料、バイオ農薬など)の製造を目的として、微細藻類ベースの大規模な総合バイオ精製所を立ち上げました*。栄養源として海水と廃水のみを使用した貴重な藻類副産物の製造の実用可能性を、技術面、環境面、社会面から実証したのです。
バイオ農薬ワークストリームでは、チームは、さまざまな植物病原菌に対抗する抗菌物質を含有する藻株の育成、試験、加工を行っています。感受性バイオマスを加工するために、GEA は、専門知識と、微細藻類の収穫・濃縮用の遠心分離機、細胞破壊用のホモジナイザ、バイオマス乾燥用の噴霧乾燥器などといった設備を提供して、2021年末の実用化に向けた活性剤の試験を支援しています。
スペインのアルメリアにある SABANA R&D 実証プラント IFAPA 研究センターでは、管状光バイオリアクターを使用して微細藻類を生産しています。(提供元: SABANA)
遠心分離プロセス用として、GEA ではさまざまなセパレーターとデカンタをご用意しております。それぞれ利点がことなりますので、藻類のタイプや栽培条件に合わせてお選びいただけます。セパレーターを選ぶ際には、処理力、生成物の粘度、固形物含有量、発酵ブロスの pH 値、細胞構造もご検討ください。バイオマスの高度な濃縮・脱水や微細藻類の分類については、GEA デカンタが次の加工ステップになります。
微細紅藻類と微細緑藻類に関しては GEA ホモジナイザが理想的です。食品サプリやビタミンサプリ、さらにはバイオマテリアルやバイオプラスチックにも必要な原材料を非常に高い品質を維持した状態で供給できます。このテクノロジーは、無菌要件を満たしているコンポーネントと、全ての規制に完璧に適合している製品の高信頼性と長寿命を確保できます。均質化は、最大1500バールで細胞外壁を破壊して細胞内液を放出させる機械的プロセスです。これは信頼性と総所有コスト回収の点で有利です。具体的な利点は次の通りです。
遠心分離器によって藻類懸濁液から遊離水の大半を除去できますが、用途によっては、噴霧乾燥を必要とする藻類粉末を使用する場合もあります。乾燥藻類粉末は高品質のタンパク質で、家畜飼料の添加物などとして使用することができます。
* このプロジェクトの資金は、助成金協定(No. 727874)により、欧州連合の Horizon 2020 Research and Innovation プログラムから提供されています。