150年にわたる醸造の歴史:すべてが異なるまま

危機、気候変動、AIが醸造業界を含む世界中の産業におよぼす影響は決して小さくありません。GEAでは醸造150周年を迎えるにあたり、数々の課題がいかにテクノロジーに拍車をかけているのかを考察しています。それは、変動性、不確実性、複雑性、曖昧性(VUCA)の時代に選択する道のりこそが、当社の原動力と、情熱的であり続けられる理由を示すことになると考えるからです。

A group of people enjoying a beer
産業革命以来の醸造の歴史においてその渦中にはGEAの存在あり

13,000年におよぶビールの歴史からすれば、過去150年のことなど些細なことでしかないように感じるでしょう。しかしその間に技術が飛躍的な進歩を遂げたおかげで、醸造業界はかつてないほど変化しました。それまで何世紀にもわたり、醸造の主流となっていたのは短期間で急速に発酵するパブのビールであり、ビールが入った木樽は馬で運ばれていました。しかし、産業革命とともに重要な技術が醸造業界を席巻するようになり、GEA醸造事業の基盤であるHuppmann社の先人たちは、当初からこの技術を採用してきました。

19世紀末以降には、冷蔵技術により、年間を通じてビールの醸造、保存、貯蔵が可能になりました。発酵温度を一定に保つことができるようになり、ビールの品質が向上しています。当初、Huppmann社では独自の冷凍技術を用いて製造を行っていました。エネルギー回収と制御技術は、早い段階から醸造業者の課題でした。低温殺菌が醸造所に導入され始めたのもこの頃です。これにより、ビールを加熱して不要な細菌を死滅させることができるようになりました。その結果、ビールをより長く保存したり、冷却せずに輸送したりすることが可能になったのです。
醸造技術におけるイノベーションの足がかり

20世紀に入ると、ホップ添加のための麦汁煮沸によって効率が飛躍的に向上し、低圧プロセスによるホッピングの高速化とエネルギー効率の向上が実現しました。ビール製造における洗浄、一貫性、衛生面が大幅に改善されたのもこの頃でした。例えば、醸造タンクや貯蔵タンクには、木材や銅といった一般的な素材に代わり、腐食に強いステンレス鋼が使われるようになっています。さらに自動充填によっても、充填速度が向上するとともにビールの販売量が増加しました。とりわけ、1935年に発明されたアルミ缶は、その軽さと頑丈さ、そして積み重ねが可能な性質により、実用的な容器としてガラス瓶に取って代わるようになります。

20世紀末にはコンピューター支援による醸造が導入され、温度やタイミング、原料添加などの醸造変数を正確に制御するための基礎が確立されていきます。今日に至るまで、自動化がビールの安定した品質と醸造所運営の効率化につながっているのです。
A person working in the front of a computer

早くも1970年代には、Huppmann社は醸造所の冷暖房システムの制御を自動化し、エネルギー消費の効率化を実現しています。写真は1990年代初頭、自動化されたフィリピンのサンミゲル・マンダウエ醸造所を写したものです。出典:GEA

発酵の現場(通称「コールドブロック」)では、ホップ抽出物やペレットが人気を集めています。これらにより、従来のホールリーフホップよりもはるかに効率的にビールに苦味と香りを加えることができるためです。コールドブロックの重要な成果のひとつは、全自動の貯蔵室配管であり、これにより短距離でビールがタンクに送られます。おかげで、以前のようにホースが絡み合った状態での製品ロスや汚染に終止符が打たれました。原則として、微生物学における進歩が、イースト菌やその他の微生物の発酵特性をよりよく理解し、コントロールするのに役立っています。
この醸造技術はこれからも活躍

これらの技術に聞き覚えはありませんか。おそらく、当時と同じように今日でも醸造と発酵における定義となっているからでしょう。もちろん、GEAによって高性能に最適化されています。冷却、保存、梱包、自動化に加えられた改良により、ビールの製造における生産量、品質、効率が飛躍的に向上し、生産計画のKPIでも引き続き著しい影響をおよぼしています。過去150年にわたる醸造の歴史は、文化的、技術的、経済的な影響の網の目を反映し、それが世界の醸造業界に対する認識を形成してきました。醸造を形容詞で表すとすれば、「永続的」という表現がぴったりでしょう。


醸造における重要なテーマは変わっていないものの、その比重は変化しています。消費者の期待や、使用する資源を削減し、環境に配慮した方法で操業したいという企業の抱負により、生産方程式に新たな変数が加わったためです。
トレンドがテクノロジーに突きつける課題

一方で、時代にはそれ相応のトレンドが存在します。例えば、ベルギーのトリプルブロンドからhazy IPA、イタリアのグレープエールやサワーゴーゼビールまで、伝統的なドイツのビール純粋令内外の原料やアロマで遊び心を表現することにより復活した、新しいクラフトビールもこれに含まれます。こういった実験では、コールドホッピングやドライホッピングなどを導入するため、機械に多数の要求が課せられますが、それこそが醸造家と同様に技術者にとっても楽しいことなのです。

それだけでなく、ノンアルコールビールにも目を向けてみましょう。今日では、最も伝統を重んじる醸造所でさえ、ミュンヘンのオクトーバーフェストという神聖な場所への参入を許可しています。(ここだけの話ですが、これ以上詳しくは紹介しないものの、非常に美味しいものとなるはずです。)醸造後に混合物や香料を添加する必要はありません。

イノベーションを左右する持続可能性

イノベーションを左右するその他の要素として挙げられる持続可能性とデジタル化は、一時的な流行ではな好機ととらえることができます。エネルギーコストや原料価格の高騰、CO2不足、サプライチェーンのボトルネックなど、醸造業界にとっての危機として認識されている事象の数々には、時として圧倒されることがあるでしょう。それでも、醸造家には選択肢があります。トレンドに追いつくために製品イノベーションのサイクルが短縮されたときこそ、真の変化がもたらされるのです。


今後、醸造所は単に醸造を行う以上の存在となることができます。需要の変化に機敏に反応し、生産施設を活用して柔軟に他の飲料を加工することができるほか、総合的なエンジニアリングコンセプトにより製造段階の後期に生産を調整することができます。

将来的には、こうした総合的なアプローチがより一層求められるでしょう。気候変動目標を達成し、排出量や水の消費量、廃棄物処理の面においてますます厳しくなる規制を遵守するためには、冷凍システムだけでなく、ヒートポンプを使ったその他多数のプロセスのステップからの熱回収といったテーマが不可欠になります。蒸気の出ない醸造所を想像してみてください。不可能なことはありません。
何も無駄にせず再利用

醸造所を低エネルギー、あるいはカーボンニュートラルにするだけでなく、必要な水量、残渣、梱包材料といったその他の事項も考慮に入れることができます。どの廃棄物やサイドストリームが新しいビジネスのアイデアになり得るのか考えてみましょう。醸造所がエネルギーコンセプトを別の外部熱源に開放する方法とは。そして、余剰熱を供給する醸造所は、自治体の熱供給ネットワークにおける完璧なハブとなるのではないでしょうか。そうすることで熱回収が可能になるほか、醸造所で発酵時にCO₂を回収し、自社分のカーボネーション (炭酸ガス飽和)を確保することもできます。CO₂を排出する代わりに利用することで、やむを得ない事態から利益を引き出すことができます。

そして、デジタル化は不安材料としてではなく、より速く、よりスマートな操業を実現し、エネルギーピークを回避して醸造所とコールドブロックの効率を長期的に最適化するための強力なツールとして活用することができます。AIを使ったリアルタイムの生産モニタリングは、品種や季節を超えた醸造プロセスや発酵のトレーニングにおいてますますその力を発揮しています。それだけでなく、エネルギーや水の消費量、原料や醸造データの計算も可能。こういった一連のAI機能を活用しない手はないでしょう。
GEA InsightPartner, monitor your brewery performance

GEAでは、醸造プロセスにおける持続可能性を高めるため、醸造所向けのリアルタイムモニタリングソリューションに予測AI要素を統合。画像提供元:GEA

危機も、気候変動も、AIも怖がる必要なし

一般的な醸造家にとっては、迫りくる課題のように見える物事も、当社は解決策ととらえています。GEAは、デジタルトランスフォーメーションに向けた高性能テクノロジーと循環型経済のコンセプトにより、またしても市場を再開拓中です。醸造業の未来は私たちの目と鼻の先にあり、醸造業界は「適応可能」という第二の形容詞をものにすることが求められています。

19世紀、Huppmann社が創設された際、フリードリヒ・リュッケルトは「夕方になると、人はその日起こった出来事から学習して知識を得ることができるが、それだけでは来たり得る日に備えるには不十分である」と記しています。今日においても、この言葉は変わらず心に響くものです。私たちは今日、明日を予測することはできません。しかし、明日を切り開いていくだけの知識は備えているのです。

13,000年にもわたる間、コミュニティを作り上げた製品の創造に貢献したすべての仲間に対して、記念日を祝福するとともに、当社にやりがいのある課題を提供してくださる、世界中で醸造業に携わるお客様、パートナー、競合他社、そして友人のみなさん全員に感謝いたします。
GEA Brewing Club: The lucky ones

GEA Brewing Club:自分たちの力で

庭の物置を小さな自家製醸造所に改造した女性。かつての子供部屋に醸造設備を揃えた男性。友人同士の試飲会はとにかく楽しいものです。GEA Brewing Clubでは、ビール愛好家が醸造にかける情熱を分かち合っています。熟練者であれ初心者であれ、技術的バックグラウンドの有無にかかわらず、誰でも歓迎される集いの場なのです。「参加するのに醸造家である必要はありません。ただ、ビールとその製造に対する情熱は必須条件です」と語るのは、GEAアプリケーション開発部門の飲料・ビール担当シニアディレクターを務めるマーク・シュネーベルガー博士。「私たちにとって、ビールは創造性を表現する手段なんです。どんな嗜好や気分も風味に変換することができます。趣味の醸造という場でこの経験を分かち合うことができ、また、プロとして醸造に携わることができる幸運な人間なんですよ」と同氏は言葉を続けます。ちょうどボックビールが瓶詰めされ、スタッフに配られたところ。そして次の種類はサマーパーティーに出される予定です。それではビール好きの皆さん、乾杯!
GEAの最新情報をお届け

GEAからのニュース配信にサインアップして頂ければ、GEAのイノベーションやストーリーの最新情報を受け取ることができます。

連絡先

ご要望をお伺いいたします。ご要望の詳細をご入力いただければ、お問い合わせに回答いたします。