二酸化炭素回収にクローズアップ

15 Sep 2023

二酸化炭素回収にクローズアップ

気候変動との戦いで大きな意味を持つ新たな手段を強化するために、GEA は二酸化炭素排出量が多い産業部門のニーズに合った炭素回収ソリューションを開発しました。

再生可能な電力、持続可能な燃料、エネルギー効率に優れた技術を段階的に導入していくことは気候変動との戦いにおいて確かに役に立ちます。しかし、それだけでは十分ではありません。短期的な対策として、汚染点源から CO2を回収し、再利用するか長期的に地下貯留していくことが重要になります。実際に、CO排出量を抑えながら気候変動対策のターゲットを達成すべく世界を舵取りしていくには、二酸化炭素の回収が最も重要な短期的ソリューションであるとみなす考えが広まっています。1

炭素回収の手法そのものは、天然ガスを売り物となる燃料に変えたり、回収された CO2 を油田に注入して石油回収率を上げたりするために、これまで数十年にわたって使用されてきた技術です。しかしながら、現在CO2排出量が多い企業にとって、炭素回収は事実上、全く新しい領域となっています。また、石油ガス会社には、製品の流れから CO2 を分離する際の明確な経済的インセンティブが常にありましたが、セメント産業や鉄鋼業の企業にそのようなことはありません。例えばヨーロッパでは、これらの産業の企業は炭素回収に投資し、それだけ価格を引き上げなければならない一方で、CO2 排出量の規制が整備されていない国の企業と競争しなければならないという課題に直面しています。そしてこの課題は後回しにすることはできません。規制当局、一般大衆、ひいては地球から気候変動への対策が迫られており、その声はあまりに大きく、切迫しています。

このように、現在、二酸化炭素を排出する産業部門の企業は、CO2を回収して取り除くための効果的かつ経済的で迅速な方法を必要としています。

GEA の炭素回収の使命

GEA には長年にわたって排出抑制ソリューションを提供してきた実績があり、現在では、排出量の多い産業部門の企業が炭素回収を導入する際のサポートに重点的に取り組んでいます。「炭素回収の可能性を実現するには、さまざまな産業部門でより低価格で、より簡単にこの技術を導入できるようにする必要があります」と GEA 炭素回収ソリューション・シニアディレクターのフェリックス・オルトロフ博士は言います。オルトロフ氏率いるチームは特に5つの産業部門(セメント産業、鉄鋼業、ガラス産業、化学産業、バイオエネルギー産業)に注目し、これらの産業独自のニーズに合わせた複数の炭素回収ソリューションを設計しました。「第一に、これらの企業の多くは規制の変更に対処しながら、ネットゼロ実現に向けた独自の道を進まなければならず、その導入を急いでいます」とオルトロフ氏は言います。「第二に、補助金は多額ではないため、多くの場合、まずは小規模から中規模のソリューションを導入し、プロジェクトコストを管理しながらその次の段階でスケールアップしようと考えています。第三に、このような企業はあまり複雑でないソリューションを探しています。この場合、プロバイダーを1社に絞ることでバッテリーの制限が削減されます。最後に、既存のプロセスを妨げることなくスムーズに組み込むことができるソリューションが望まれています。」

これらの要件を満たすために、GEA は次の4つの主要コンポーネントから構成される、エンドツーエンドの炭素回収ポートフォリオを開発しました。

  • XECO 廃熱回収 – 最大限の経済性を追求:CO分離に必要な熱の大部分をプラントのプロセスおよび煙道ガスの熱でまかないます。 
  • SETO ガス前処理 – 最大限の効果と耐用性を追求:煙道ガスから有害な微量成分を除去し、炭素回収の化学反応の長期的な安定性を最大限に高めます。
  • CEBO 炭素回収プラント – 4種類のサイズがあるアミン法炭素回収プラントは設置が簡単で、目的に合った経済的なソリューションをお客様に提供します。 
  • NAVO COの利用・隔離 – COの精製、液化、調整、輸送用ソリューション。回収した COを除去し、生産工程で再利用したり長期貯留したりできます。

オルトラフ氏は、GEA が排出抑制、廃熱回収、CO液化、再利用の分野で豊富な経験を持っていること、さらに産業プロセスラインの設計、設置、拡張に関するコアな専門知識を有していることにより、競合他社に対する優位性が得られると考えています。「数十年にわたる排ガス処理の経験を活かして、コスト効率および耐久性の高い材料を使用した、より標準化されたシンプルな設計コンセプトをご提案することができます。」とオルトラフ氏は述べます。「さらに、この分野の既存の企業と比較して、非常に競争力のある価格帯で大規模なプロジェクトを運営するだけの財務力もあります。また、当社では性能を保証していますので、お客様にとってプロジェクトリスクは非常に低くなります。」

炭素回収

最適かつ経済的に CO2 を削減するための GEA の炭素回収ソリューション。

熱回収による費用効率

炭素回収プロセスで最もエネルギー消費量が多いステップは、リボイラーでアミン溶液を加熱して COガスを脱着させ分離する工程です。GEA の XECO 廃熱回収ソリューションは回収プロセスのこのステップでプラントの廃熱を最大限に利用し、操業コストを最小限に抑えます。

「現在、一部の大規模な炭素回収プロジェクトには潤沢な公的資金が投入されています。これは新技術の実績を築くために必要なことですが、その一方で残りの大多数の企業は自力で炭素回収のための資金を調達しなければなりません。回収した廃熱を炭素回収プロセスに利用することは、コストを最小限に抑える非常に有効な方法です。」- GEA 炭素回収ソリューション・シニアディレクター、フェリックス・オルトロフ博士

- GEA 炭素回収ソリューション・シニアディレクター、フェリックス・オルトロフ博士

オルトロフ氏の指摘にもあるように、効果的な廃熱回収システムは、各プラントの煙道ガスの特性に応じて設計されていなければなりません。また、熱媒油かスチームか、適切な熱媒体を選択することも重要なポイントとなります。「GEA には、産業プロセスや煙道ガスからの余熱を利用してお客様のプラントでのエネルギー効率を高めるサポートをしてきた長い実績があります。」とオルトロフ氏は言います。「例えば、セメント工場での熱回収の場合、キルンの煙道ガスに含まれる粉塵負荷が高く、熱回収ユニットの寿命に多大な影響が及ぶ可能性があることを考慮しなくてはなりません。その点、当社の XECO 廃熱回収システムは、非常に優れた熱伝達性能を保ったまま、このような条件下でも長期に渡って稼働することが実証済みです。」 

ガラス製造業でも GEA の XECO ソリューションは10年以上にわたってエネルギー効率の向上に寄与してきた実績を持ちます。「ガラスの製造には比較的大量の廃熱が発生するため、当社の炭素回収ソリューションがあれば追加エネルギーをほとんど、あるいは全く投入することなく、多くの CO(約40~50%)を除去るのに役立ちます」とオルトロフ氏は言います。

長期にわたって性能を維持するためのガス前処理

GEA では長年にわたり、セメント産業、鉄鋼業、ガラス産業、化学産業、バイオエネルギー産業にさまざまな排出抑制ソリューションを提供してきました。「産業部門に応じて煙道ガスの成分が異なるため、最適な炭素回収性能を実現するには煙道ガスの適切な前処理が不可欠になります」とオルトロフ氏は言います。これは、これらの産業部門の標準的な排ガスに、CO2の回収と除去に使用されるアミン溶液の安定性に悪影響を与える微量成分、特に窒素酸化物 (NOx)、硫酸化物 (SOx)、エアロゾル、粉塵などの固体粒子が含まれているためです。 

前処理には煙道ガスの湿度管理も含まれます。「アミン溶液中の水分濃度は一定に保つ必要があります」とオルトロフ氏は説明します。「煙道ガスの水分含有量が高すぎたり低すぎたりしても性能が低下します。」炭素回収システム内で堆積物が形成されると保守コストが大幅に増加しますが、GEA の煙道ガス前処理によりこのようなリスクも低減します。 

GEA はこれらの産業特有の煙道ガス成分を把握しているため、SETO ガス前処理ソリューションを設計する際にそれぞれのガス成分に応じたガス洗浄ラインを構成することができます。「当社が持つガス前処理の経験をいかして、お客様の既存の排ガスラインに CO分離プロセスをシームレスに統合することで、操業コストを削減し、より信頼性の高い炭素回収性能を実現できます」とオルトロフ氏は言います。

アジャイルな炭素回収

GEA の CEBO 炭素回収プラントでは、アミンを用いた最先端の CO回収手法を採用しています。プラントの煙道ガスをアミン溶媒に通すことで、吸収によって COを除去します。溶媒が加熱されて純粋な COが放出されると、再利用または貯留の最終段階に進みます。石油ガス産業ではこのような手法は長年にわたって確立されていますが、その他のさまざまな産業部門でも炭素回収を迅速に、手頃な価格で導入することが現在の課題となっています。「石油ガス産業で行われているアミン法による炭素回収は、通常、大量のガスを処理するための大規模プロジェクトとなり、建設、設置、運用に莫大なコストがかかります」とオルトロフ氏は言います。「このような手法は、ガスの処理量や予算がそれぞれ異なる当社のターゲット産業、すなわち、セメント産業、鉄鋼業、ガラス産業、化学産業、バイオエネルギー産業部門のニーズに合っていません。これらの産業部門には、簡素化された、よりアジャイルなアプローチが必要です。」

GEA では各産業部門の平均的な廃熱量に応じて、16~200 ktpa の CO分離能力を持つ4種類のサイズの炭素回収プラントを提供しています。

「大規模なセメント工場では、廃熱により初期段階で排ガスの CO2 を20%回収できる見込みがあります。ガラス工場の場合には、その数値は40~50%に達する可能性があります。」- GEA 炭素回収ソリューション・シニアディレクター、フェリックス・オルトロフ博士

- GEA 炭素回収ソリューション・シニアディレクター、フェリックス・オルトロフ博士

「バイオエネルギーは興味深いものです。COを隔離することで、人為的な CO 排出量を正味マイナスにできます。これは、回収された COがそもそもバイオマスの成長に由来しているためで、いわば自然直接空気回収です。」

GEA の CEBO 炭素回収プラントはシンプルな設計で、モジュール構造になっています。40フィートの標準コンテナがそれぞれ「構成要素」となり事前に組み立てられますので、すばやく設置することができ、出入りや保守作業がしやすいようにサイドドアがあります。CEBO 炭素回収プラントには熱可塑性プラスチックやステンレス鋼などの耐食性の材料が使用されています。自己最適化制御システムは遠隔サポートに対応しており、操作がしやすく、お客様は迅速に技術サポートをご利用できます。 

気候改善のための利用と隔離

企業の気候バランスにプラスの影響を与えるには、回収した COを地下に長期貯留するなどして隔離するか、化石 COの代わりとして飲料や燃料などの生産に使用する必要があります。回収された COの利用および貯留のマーケットやインフラはいずれも比較的新しいため、そのことが炭素回収に着手する企業にとってさらなる課題となることがあります。 

  • 再利用、貯留、輸送にはどのような選択肢があるのか? 
  • 純度、物理的状態、圧力、温度の観点からどのような要件を満たす必要があるのか? 
  • 長期にわたってこれらの要件が満たされた状態をどのように維持できるのか? 

GEA の NAVO CO2の利用・隔離ソリューションには、CO2 液化、調整、輸送、再利用を含む化学処理の長年のノウハウが活用されています。「当社では CO2を必要に応じて調整し、モジュール輸送またはパイプライン供給のための接続ポイントを準備することができます」とオルトロフ氏は言います。「産業再利用の場合、液体状態で冷蔵タンクに入れてトラックや鉄道で輸送するのが最も一般的です。ヨーロッパ (EIGA) では、食品用や飲料用には99.9%以上の純度が要求されます。2一方、貯留目的でパイプライン輸送する場合、条件は異なります。」液体 CO2の輸送費は以前から高額であるため、GEA では周辺地域で潜在的な CO2 の顧客を見つけることを推奨しており、バッテリー制限仕様に関するサポートを提供しています。 

  • GEA は醸造業界の長年のパートナーとして、飲料製造工程で再利用するために食品グレードの CO2を回収した経験があります。 
  • GEA は産業パートナーと協力して、化学業界で燃料、燃料添加剤、またはシード構成要素として使用されるメタノールを COと H2 から合成することができます。 
  • GEA はまた、回収した COから炭酸塩を製造するノウハウも提供しています。炭酸塩はガラス産業、製薬業、パルプ産業、製紙業などのさまざまな産業に使用されます。「GEA には結晶化技術の豊富な経験があり、1 日あたり数百トン生産規模の炭酸塩/重炭酸塩プロジェクトを担う技術サプライヤーとしての役割を果たすことができます」とオルトロフ氏は述べます。 
  • 柔軟性を高めるために、GEA は回収した CO2の中間貯留施設というオプションも提供しています。 
  • さらに、CO2の冷却と圧縮によって得られる熱エネルギーを熱伝達システムに再投入することで、総合的な効率を高めることもできます。
持続可能な成功へ向かう小さな一歩

GEA が 2021 年に炭素回収製品の開発に着手したのは、数十年にわたって培われた GEA のノウハウを、気候変動との戦いで大きな意味を持つ新たな手段に活かすことができる機会が来たと認識したことがきっかけです。また、セメント産業や鉄鋼業などの二酸化炭素を多く排出する企業が、いきなり大規模な設備に移行する前に、小規模な炭素回収システムから導入する必要があることも認識していました。「私たちは90%の COを除去できる炭素回収プラントを設計しました。パイロットプラントでそれが可能であることが確認されています」とオルトロフ氏は言います。

「しかし、短期的には、徹底した除去はほとんどの企業にとって現実的ではありません。現時点では、炭素回収への投資コストとカーボンクレジットのコストのバランスをとりながら、その両方を追求し続ける必要があります。ただし、使用できるクレジットが少なくなり、価格が高くなるにつれて、企業は炭素回収への投資を増やさざるを得なくなります。”」- GEA 炭素回収ソリューション・シニアディレクター、フェリックス・オルトロフ博士

- GEA 炭素回収ソリューション・シニアディレクター、フェリックス・オルトロフ博士

株主からの要求、規制の厳格化、政府による奨励金の増額、回収された CO市場の活発化、あるいはそれらすべての要因により、近い将来、これまでより多い割合の CO排出量を再利用や貯留のために回収するようになるかもしれません。「私たちはそのための準備ができていて、時機が来るのを心待ちにしています」とオルトロフ氏は言います。「そのときまでは、すばやく導入できて費用対効果の高い、スケーラブルなソリューションを提供することで、二酸化炭素排出量の多い企業が少しでも効果を上げていけるようにサポートしていきます。セメント工場で20%の COを除去できれば、それが大きな一歩となり、将来的にさらに二酸化炭素除去能力を高めていく道筋ができるでしょう。」

パイロットプラントでの実証

GEA ではターゲット産業向けの概念実証として、ガス前処理モジュールを完備した「モバイル式」炭素回収パイロットプラントを開発しました。さまざまな規模のプラントに簡単に組み込むことができるこの試験用プラントは、お客様に完全な透明性を提供する設計となっています。お客様は自分で操作してみた上で、性能や自動化レベル、操作のしやすさを判断することができます。現在、ドイツのベックムにある PHOENIX Zementwerke 社に3~6か月の機関で試験的に運用されているこのプラントでは、これまでに、オルトロフ氏の目標である90%という CO2 除去効率を達成し、現場での炭素回収プロセスの最適化に役立つ貴重なデータが収集されています。「ガス前処理を試験用プラントに統合することで、特定の操作を行ったときの排ガスマトリックスについての理解を微調整することができ、アミンとの化学反応を長期的に安定させる方法をより理解できます」とオルトロフ氏は言います。「ここで得られた経験は、完全に稼働可能な炭素回収プラントをさらに迅速に、効果的にスケールアップするために役立ちます。」GEA は現在、PHOENIX と協力して、より大規模な炭素炭素回収プラントを同じ敷地内に設置するコンセプトに取り組んでいます。現行のパイロットプラントは2023年第4四半期に、2番目のセメント業者へ移転される予定となっています。

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