2024年10月10日
多くの国々で生活水準が上がるにつれ、ボタンをクリックするだけで注文でき、数日で自宅に届く安価な衣料品である「ファストファッション」に対する需要も高まっています。国連の、持続可能なファッションのための同盟によると、新型コロナウイルス感染症が流行する前、平均的な消費者は15年前と比べて60%も多くの衣服を購入し、それぞれのアイテムを半分の期間しか着用しなかったとされています。ファストファッション現象は、数十年来の課題とされる、繊維製品と繊維生産による環境への影響を削減する必要性を文字通りに浮き彫りにし、その重要性を高めています。国連環境計画2023年度版の報告書「繊維バリューチェーンにおける、持続可能性と循環可能性」で報告されているように、繊維産業は年間、何兆リットルもの水を使用し、海洋におけるマイクロプラスチックの年間流出量は約9%を占め、世界の二酸化炭素排出量の最大8%を排出しています。
これに加え、国連持続可能なファッションのための同盟は、ファッション業界は、リサイクル不足や売れ残った衣類が埋立地に送られることにより、毎年推定5,000億米ドルの価値を失っていると推定しています。使用済み繊維製品のための持続可能なソリューションは、多くの国で未発達であるか、完全に欠けています。一般的に、繊維から繊維へリサイクルされる繊維廃棄物はわずか1%程度と報告されています。この状況は、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET))のような合成素材と綿などの有機繊維から作られる混合繊維の場合に特に深刻です。2022年に発表された年次報告書「2025年リサイクルポリエステルの挑戦」の中で、テキスタイルエクスチェンジについては、アパレル業界が2019年に使用したポリエステル繊維は3,200万トンで、そのうちリサイクル(rPET)されたのはわずか14%であったと推定しています。
メディア主導の現代社会においては、廃棄された衣料品が水路を詰まらせたり、ゴミの山で燃やされ煙がくすぶる光景は気づかないわけはありません。理由と共に、消費者も政府もより多くの廃棄される衣料品をリサイクルするように求めています。
2020年、フランスは売れ残った衣類の廃棄を禁止する法律を可決し、2024年までに繊維廃棄物の70%をリサイクルする目標を掲げました。オートクチュールの歴史的中心のひとつであるフランスは、繊維製品の回収、選別、リサイクルを産業化することで、国民に衣服や靴の修理を奨励さえしてファッション廃棄物の削減を重視しています。2024年にはEUもこれに追随し、中小企業は例外としながらも、売れ残った衣料品や返品されたアイテムの廃棄を禁止する独自の法律を制定しました。そして2025年、1月1日からは、すべてのEU加盟国に繊維製品の分別回収が義務付けられることになります。スウェーデン、フランス、デンマークは現在、EUに対し、発展途上国への繊維廃棄物の輸出を規制する新たな世界基準の導入を求めていますが、これはまだ検討中です。
混合繊維を使用した衣料品の循環型のバリューチェーンは、繊維サプライチェーンに入るバージンPETや綿の量を大幅に削減することができます。しかし、より複雑なこれらのアイテムをリサイクルするには、再利用可能なポリマーと繊維を分離、隔離し、作り出す化学的なプロセスが必要となります。最初に、材料は化学薬品を使って分子レベルまで分解されます。次に、汚染物質が除去されます。そのっけっか、PETのような高品質のポリマーが作られ、衣類や、その他の用途に再利用が可能になります。簡単そうに聞こえますね。しかし、持続可能な方法で行うということになると、工学的、プロセス的、そして化学的な専門知識を要するいくつかの手順がなおさら必要になります。
PETボトルのリサイクル分野での成功に続き、GEAは現在、衣類からのPETリサイクルを完璧なものにするために、この関連した専門知識を活用しています。最も一般的なシナリオを、完全な化学リサイクルラインを開発している企業と提携することです。その中で、GEAは革新的な蒸発、結晶化、反応、蒸留、固液分離、乾燥ソリューションを提供し、PETの第二の活用を可能にしています。
蒸留器と晶析装置は、機械的蒸気再圧縮機(MVR)により加熱され、プロセス凝縮水水を再利用することができます。可能であれば、GEAはお客様がこのプロセスから出る廃熱を再利用し、エネルギー源に変えると同時に貴重な有機化合物の回収にも役立たせることもできます。現在、リサイクル肯定で余った硫酸ナトリウムを、クローズドループで再利用する方法、他の用途に有価物として再利用する方法、またはその両方を実現する技術を開発中です。
GEAの米国をベースとした顧客、Circ社は、繊維リサイクルにおける最も困難な課題に取り組んでいます。ポリコットンの場合、Circ社は水熱プロセスを適用し、ポリエステル繊維を液体に変え、熱と水、低い割合(<5) の化学薬品だけで綿とポリエステルの混合物を完全に分離します。その結果、モノマーも綿も損傷なく保存されるため、新しい繊維製品への再利用に適したものになります。
GEAは、Circ社のこのプロセスにおける、モノマー回収段階をサポートしています。「Circ社は、モノマー回収と副生成物処理に関して明確な目標を定めています。」と、GEAの濃縮および結晶化の担当ディレクター、ローランパリエーヌは説明しています。「テストセンターにおいて、私たちはプロセスの主要な段階を改良し、再現することに成功しました。これにより、複雑なモノマー回収プロセスで要求される精度が実現可能になりました。」テストセンターと共に、GEAは蒸発、結晶化、加熱、混合、固液分離、蒸留、乾燥に冠する数十年に及ぶ専門知識を有していることからも、GEAがCirc社のような顧客のパートナーとなることは自然の成り行きです。この協力関係の成果は、世界初の繊維用PETリサイクル専用工場のテンプレートとなる、新しいプロセス設計であり、Circ社は政府からの資金援助が受けやすいヨーロッパで、2027年までに新しいプラントを稼動させる予定です。
ファッション業界はトレンドによって左右されています。季節が新しくなるたびに、新しい色とデザインが現れます。残念なことに、ひとつのトレンドは変わることがありません。それは織物と織物生産が環境に与える悪影響であり、循環型の織物生産のバリューチェーンを構築しなければさらに増加するという事実です。GEAが産業用PETリサイクルプロセスにおける重要なギャップを埋めているように、衣料品が環境へ与える悪影響を減らすためには、誰もが果たすことができる役割があります。
消費者は、マイクロプラスティックの流出を防ぐために洗濯の頻度を減らし、衣類を廃棄物として扱うのではなく、修理やリサイクルの方法を見つけるなど、少ないほうがより豊かであるという考え方を採り入れることができます。衣料品ブランドもまた、自社製品にもっと責任を持つための多くの手法を持っています。リサイクル原材料をより多く使用し、アフターサービスで修理や自社の中古品を提供し、売れ残りや返品された商品を焼却せずにリサイクルすることができます。クリエイティブになるなら今です!
「特に合成繊維が関係する場合、繊維リサイクル技術を拡大することには非常に大きな意味があります」とパリエーヌ氏は語ります。「私たちは、ブランドがより多くの売れ残り商品をリサイクルし、生産者が生産に還元できる価格でrPETを生産する手助けをすることができます。」ファッションや繊維産業がより循環型になれば、バージンrPETの生産による有害な排出が削減され、世界の海に流入するマイクロプラスティックが減少し、綿花生産による消費量と土地利用も削減するでしょう。だからこそGEAは、繊維リサイクルのお客様のために適切なソリューションを見つけ出し、より良い世界にするためのエンジニアリングに情熱を注いでいるのです。