17 Jan 2022
アルファルファ(Medicago sativa)とも呼ばれるムラサキウマゴヤシは粗繊維が豊富なため、質の高い干し草として、ハイパフォーマンスな乳牛向け飼料の配合において一定の割合を占めています。アルファルファには天然のビタミンと栄養素が豊富で、乳牛にも大人気です。
COP26 で定められた目標を達成するにあたって最大の課題のひとつとなるのは、増加し続ける人口に対していかにサステイナブルに食料を確保していくかという点です。GEA では、当社のソリューションがさまざまな産業界における効率化に一役買っていることを嬉しく思っています。さらに、食品から代替食品、冷凍技術や酪農、農業にいたるまで、当社の気候変動対策とサステイナビリティ向上のための活動にも自信を持っています。当社のソリューションはこのような分野においてこそ、非常に大きなインパクトを与えることができるのです。
一歩下がって長期的な傾向を考えてみれば、確実に進歩しているという兆候を確認できます。ここでは農業を例に挙げてみましょう。2017年に EU 圏内で排出された温室効果ガス合計量のうち10%が農業活動によるものであることを考慮すると、農業は非常にインパクトの大きい産業であるといえます。ですが、この数字は以前より大きく改善されているのです。実際に、農業部門では1990年から2017年にかけて19%の排出量削減に成功しています。
これらのデータは畜産業の異なる分野やと要因を総括したものであるため、ここでも物事をもっと大きく捉えることが大切だと思います。酪農に注目してみると、過去数十年で顕著な傾向として挙げられるのが、牛乳の生産量は増加しているものの、乳牛の頭数は大きく減少しているという点です。米国を例に挙げると、1950年から2000年にかけて乳牛の頭数が50%以上減少していますが、合計牛乳生産量は40%以上も増加しています。つまり、牛1頭あたりの生産性は、この間に3倍以上になっているのです。ドイツでも、1990年には640万頭だった乳用牛群が今日では約390万頭まで減少しています。そしてこの期間、ドイツ国内における1頭当たりの(平均)牛乳生産量は約2倍近くまで増加しているのです。少ない頭数でより多くの牛乳を生産できるようになったのは、主に飼育方法や乳牛の健康促進、給餌面、さらには酪農の効率化における技術進歩の賜物です。
実際に、乳牛1頭当たりの牛乳生産量を増加させることは、kg当たりの牛乳生産量における温室効果ガス排出量の削減に有効な戦略であるとみなされています。これに関しては興味深い数字が出ています。2011年に紹介されたモデル(M.ツェートマイアー他)によると、乳牛1頭当たりの年間牛乳生産量が6,000 kgから8,000 kgに増加すると、乳牛1頭当たりの温室効果ガス排出量は年間で9,578 kgから7,689 kg(CO2)まで削減されるとのことです。この温室効果ガス排出量の削減は、基本的に消化管内発酵、堆肥、土壌から発生する亜酸化窒素(N2O)の削減によって実現されています。
そして、これこそが自動給餌システム(AFS)による貢献が可能な分野の一例でもあるのです。GEA の経験に基づくと、AFS を使用すれば、もちろん酪農場における当初の飼料管理状況にもよりますが、1頭当たりの牛乳生産量を毎日4 kg、年間にして1,220 kg増加させることができます。給餌の頻度を増やして(毎日6~8回)、その都度新鮮な飼料を混合し、AFS の精度を上げることで、生産性が向上するのです。これは生産を大きく後押しするもので、CO2 排出量にも大きなインパクトを与えることが期待されています。
GEA が35年以上にわたって酪農における給餌システムのオートメーション化に携わってきたのには、それなりの理由があります。給餌システムのオートメーション化は、特に酪農家の個々のニーズに合わせて微調整すれば、労働時間を削減しつつ給餌の効率化を図り、牛乳生産量を増やすことができるため、酪農家に大きな影響を与えます。
ここまでは、乳牛の生産性の向上が CO2 排出量に与える影響とそれに関して AFS が果たし得る役割について説明してきました。ですが、AFS は電動でディーゼルを使用しないため、それだけでも酪農場の二酸化炭素排出量を削減することができるのです。GEA の経験に基づくと、従来型の給餌方法を採用している酪農家がミキサーワゴンの動力として使用するディーゼルは、牛1頭あたり年間約18リットルになります。1リットルのディーゼルを燃焼させることで2.65 kgの CO2e が発生すると仮定すると、200頭の牛群を抱える酪農場では、ミキサワゴンを駆動させるだけでも年間およそ9,540 kgの Co22e が排出されるという計算になります。一方、自動給餌システムは電動タイプなので、ディーゼルは一切必要ありません。2015年にバイエルン州農業研究所が行った調査によると、MixFeeder システムは1頭当たりにつき毎日 21.36 kWh の電力を消費するとのことです。さらに1 kWhの電力が336 gの CO2e(ドイツにおける2020年の数値)に相当すると仮定し、これを200頭の牛群を抱える酪農場に適用すると、自動給餌システムによって発生する排出量は年間で約 1,435 kgの CO2e となります。これは従来型の給餌方法による排出量を大きく下回っており、AFS によってエネルギー効率を向上させることができるという良い例と言えるでしょう。
その点に関して CO2 排出量における効率化への影響を数値化するのは簡単ではありませんが、効果は期待できます。酪農はさらに厳しい監視の対象となっていくため、乳牛の給餌効率向上が環境に与える影響の評価も含め、異なる酪農活動が温室効果ガスの排出量に与える影響について、今後多数の研究結果が発表されるでしょう。例えば、家畜、堆肥、牧草地、飼料貯蔵庫という4大分野において乳製品が環境に与える影響を予測する際には、RuFaS(Ruminant Farm Systems/反芻動物畜産システム)モデルが使用されています。これらの分野はいずれも温室効果ガス削減のために対策を講じる余地があるとされている分野です。このモデルによると、給餌効率、飼料配合、飼料原料の選択、エネルギー源面を改善すれば、温室効果ガス排出量の削減につながる可能性があるとなっています。そして、拒絶率が低いということは給餌効率に好影響となります。
AFS のおかげで、拒絶率は実際に大きく下がっています。1頭当たりにつき毎日50 kgの混合飼料を与えると仮定して、それを200頭の牛群を抱える酪農場に当てはめて考えてみると、毎日10,000 kgの飼料を与えるという計算になります。従来型の方法では、平均拒絶率はおよそ5%となっています。自動給餌システムを使用した場合、拒絶率を約1%にまで下げることも可能ですが、ここでは GEA の経験に基づいて2%になると仮定しましょう。そうすると、ここで例として挙げた酪農場では、従来型の方法では毎日500 kgの飼料が拒絶されるのに対し、自動給餌システムを使用した場合の拒絶量はわずか200 kgとなります。結果として、日常的に飼料のロスを大きく削減できるだけでなく、年単位で考えると非常に大きな数値になることがうかがえます。
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そうです。これは AFS によっていかに酪農場が短期間でよりサステイナブルな場に変化するかという一例にすぎません。ここ数年にわたり、いくつもの企業がメタンガスを抑制する添加物、第一胃の効率を改善する添加物などを市場に導入しています。これらの添加物はすでに飼料に含まれており、少量であるため、期待される結果を出すためには適切に混合・配分する必要があります。AFS では管理された環境を作り出すことができるので、適切な量の添加物を高精度スケールで計量し、混合品質を常時監視できるほか、グループに応じて添加物の量を調整することもできます。AFS を使用することで確かな精度の確保とシステム化が実現するため、この手の給餌システムにおけるイノベーションをテストし、さらに開発を進めていくことが可能となるのです。
その通りです。当社が把握しているところによると、AFS の導入に踏み切った酪農家では、早速明らかな労力の節約が確認されています。ですが、時間の経過とともに、AFS による生産性の向上、エネルギー効率と給餌効率の改善、さらには飼料ロスの減少が実際に酪農場の環境パフォーマンスにインパクトを与えてきています。
ですので、政府が規制を実施してグリーン技術支援のための助成金を設定するようになれば、自動給餌技術は酪農場の収益性とサステイナビリティの双方を改善するための効果的なツールとして、「ポリシーミックス」における重要な役割を担うことになるでしょう。これは小さな一歩ではあるものの非常に重要であり、このようにして農業・畜産業でここ数十年において確認されている着実な進歩を維持し、二酸化炭素を確実に削減しながら食料品を確保していけるようになるはずです。