12 Jul 2019
2018年後半にサマセットにて設立された最先端の南西部酪農開発センター(SWDDC: South West Dairy Development Centre)は、農業工学精密革新センター(Agri-EPI Centre: Agricultural Engineering Precision Innovation Centre)が所有する実用酪農施設です。農業革新のための農業工学センターは英国内に全部で4つあり、産・学・官の連携によって、農業食品分野における効率、回復力、生産力の向上をけん引しています。Agri EPI センターの使命は、精密農業技術と精密工業技術の導入を促進し、農業食品チェーン全体の生産力を活性化することです。この使命の中で、SWDDC は、英国内の持続的な牛乳生産に関して新たな展望をもたらし、牛乳生産の効率と採算性を向上させることを目的としています。
SWDDC は、英国で最も重要な牛乳生産地域の1つに位置し、酪農専門の Kingshay により運営されています。さらに、180頭の乳牛が飼育されており、新しいテクノロジーと技術の開発、テスト、実証を行える革新的な環境を提供して、持続性と効率性に優れた低コストの牛乳生産を支援しています。環境にやさしい建築・管理システムのスマートなデザインは、家畜の健康と福祉を最重要視すると同時に、全英の酪農業者の利益のために企業が新しいアイデアの試用や再検討を行えるプラットフォームを提供します。Agri-EPI の酪農責任者と SWDDC のプロジェクトマネージャーを兼任するダンカン・フォーブス氏は、「我々はここで新しいものの試験と試用を行っています。失敗をすることもありますが、他の酪農業者が行わないような試験や試用です。」と説明しています。
英国サマセットの Agri-EPI センターの南西部酪農開発センターでは、Agri-EPI センターが保有する乳牛180頭が飼育されています。(画像提供元: Farmers Weekly)
GEA の酪農知識と酪農ソリューションは、同センターで中心的な役割を果たします。主な要素はGEA の自動給餌テクノロジーで、正確な量の新鮮な餌やサイレージを1日当たり最大17回供給できます。飼料は3台の GEA Feed Bunkers から毎日補給されます。これは酪農スタッフがテレハンドラーを使って行うと30分程度かかる作業です。ビーターローラーにより飼料がバンカーから GEA MixFeeder 内に引き下ろされます。MixFeeder はインテリジェントなワイヤレス統合制御(WIC)ソフトウェアを採用しており、生飼料貯蔵庫とサイロに直接接続され、各プロセスステップ(正確な重量計測や着実な混合から、完璧に調整された量のグループ給餌、後続の各給餌量の報告と調整に至るまで)を管理します。より複雑な環境では、給餌位置から各家畜グループまでの最短ルートを計算することも可能です。SWDDC では、乳牛の混乱を最小限に抑えるために建物内の高い位置に MixFeeder を取り付けています。
英国サマセットの Agri-EPI センターの南西部酪農開発センターでは、GEA 飼料バンカーで餌の補充のために自動 GEA MixFeeder が組み込まれています。(画像提供元: Agri-EPI センター)
GEA MixFeeder at SWDDC は、次の理由により、同センターで最も有効なテクノロジーの1つであることが証明されています。
英国サマセットの Agri-EPI センターの南西部酪農開発センターでは、GEA MixFeeder により正確な量の新鮮な餌が1日に最大17回供給されています。(画像提供元: Agri-EPI センター)
- GEA 搾乳・酪農販売部門(英国)責任者デービッド・シモンズ
SWDDC は、分娩エリア、横臥エリア、ロボット搾乳器、主要給餌エリアなどの場所において、乳牛の全体的な快適性と移動のしやすさを促進することを目的としています。搾乳については、3台の GEA ロボット搾乳器のうちの1台に乳牛が到着すると、その乳牛の首に装着されているセンサーが作動して搾乳ゲートが自動で開きます。乳牛が個別に認識されるので、搾乳器を正確に乳頭に取り付けることができます。乳牛の生産性に応じて濃厚飼料が与えられている間に搾乳を行います。低刺激のロボット搾乳器によって、各乳牛の牛乳に関するデータ(生産性や質など)も収集されます。このシステムは、安定した搾乳ルーティンを確保でき、さらにライナ内部で全プロセスをシームレスに管理する GEA In-Liner Everything® を組み込むことができます。以下の機能が含まれています。
同施設は間仕切りのない設計になっており、牛群が建物内のどこからでもロボット搾乳器を目視で確認できるので、搾乳するときに乳牛が経路を簡単に見つけることができます。乳牛は1日に何度も搾乳できるのでこれは重要です。この自由により乳牛がリラックスできるので、乳牛の健康を維持しながら最大の生産性を確保するためにはこの自由は重要な要素です。布製の天井は半透明になっていて内部の照明レベルを均等にすることができ、最新の照明により必要になった場合にも対応できます。効率的な通風機能により環境温度が調整されます。この機能には自動で上下左右に移動する Galebreaker カーテンウォールが含まれており、これによって風速、降雨、内部温度を調整します。
英国サマセットの Agri-EPI センターの南西部酪農開発センターでは、乳牛が餌ゾーン、休憩ゾーン、搾乳ゾーン間を簡単に移動できる。
牛乳はその後、エネルギー効率に優れ洗浄が簡単な GEA 冷却タンク TCool に送られます。タンクプロセスは Icool 制御システムで簡単に管理できます。このシステムは、牛乳の冷却と均質化、および産乳量の監視を自動で行い、保管状態とタンクの衛生状態に関するデータを総合的な文書にまとめます。
Kingshay チームは GEA の牛群管理ソフトウェア DairyPlan を通じて稼働状態を管理します。このソフトウェアはあらゆる農場規模に適応するように調整できる柔軟なソリューションです。SWDDC には統合された GEA CowScout テクノロジーもあります。DairyPlan ソフトウェアを使って、乳牛の発情期のタイミングや食餌の適切性を示すデバイスで、乳牛の首や足に装着されます。このプラットフォームはヤギやヒツジにも有効で、以下に対応しています。
- Agri-EPI センターの酪農部門責任者ダンカン・フォーブス
飼料は酪農においておそらく高額のコストがかかるものの一つです。酪農業にとって牧草が最低コストの飼料ですが、一般に、多くのロボットユニットを使って牧草プログラムをうまく実行することは難しいとされています。SWDDC は、ハイパースペクトル画像や衛星データなどの新たなテクノロジーを使用して周辺牧場の牧草の生育の監視と予測を行うことで、この問題を解決したいと考えています。これにより牛群は新鮮な牧草が生えている4つのエリアを毎日利用できます。これは正確な放牧を実現する上で重要な要素です。このテクノロジーは、牧草地とロボット搾乳器の間の乳牛の流れを促す通り道と柔軟な放牧場のネットワークを経由して、乳牛のセンサーと分離ゲートを通信させる GEA DairyPlan 牛群管理システムにより機能します。
この優れた酪農接続性は、英国のイニシアティブである 5G RuralFirst に対応しており、5G RuralFirst は SWDDC とその他のセンターを通じて機能し、農村環境における 5G の潜在性を模索します。SWDDC ではこれにより、乳牛の首かせの使用、健康状態と幸福度の監視、牛乳解析による乳牛の生殖能力を監視するデジタルシステム、そして最終的には、拡張現実により酪農作業員を獣医につなぐ「仮想獣医」システムも網羅します。
- Agri-EPI センターの酪農部門責任者ダンカン・フォーブス