鋼鉄の頭脳

2024年2月19日

最新のセンサー技術、クラウドコネクティビティ、高度な分析がしっかりと整備されたことにより、GEA は現在、ガンガン稼働する機械にインテリジェンスレイヤーを追加できるようになりました。結果として、製造工程におけるパフォーマンスと持続可能性を新たなレベルに引き上げる AI の力が実証されています。

デジタル化が急速に進むことにより、一部の「旧世界」ハードウェア（固定電話や DVD プレーヤーなど）が無用の長物になりつつある一方で、世界中の産業プラントやプロセスの基幹を成す機械は、かつてないほど多忙を極めるとともにその重要性もこれまで以上に向上しています。食品製造から廃水処理にいたるまで、これらのスチール製セパレーター、ホモジナイザ、噴霧乾燥機、スライサ、オーブン、チラー、包装機、ヒートポンプなど、数多くの機械がこれまで以上にエネルギー消費量と廃棄物の発生を抑えながら、さらに生産量を増やすよう求められているのです。今日の需要に応えるためには、プラントオペレーターがかつてないレベルの生産性と効率で機械を稼働させる必要があります。確かに簡単なことではありませんが、機械そのものがよりスマートになっているという事実が追い風になってくれるでしょう。

GEA の機械における知能の進化は数十年前にまでさかのぼります。初期の知能といえば、温度や圧力、流量といった個別データを提供する初歩的なセンサー技術でした。今日のセンサーはより洗練されており、至る所に設置されています。製造業におけるモノのインターネット（IIoT）の拡大、そしてより多くのデータを必要とする機械やプロセスが相まることで、GEA のような機械メーカーが機械向けの新しいデジタルソリューション開発に AI を活用できるようになるという大きな可能性が生まれるのです。

GEA では AI を利用して、既存のセンサー技術とデータ、分析にインテリジェンスレイヤーを追加しています。新世代を担う GEA の機械はすでに市場に登場しており、詳細なプロセス設計の知識とお客様個々の運営状況を理解することで、リアルタイムでの調整が行われています。これにより、継続的で最大限の生産性を可能にしながら、自動調整が可能な自動化システムへの扉が開かれることになります。つまり、AI を利用することで、GEA のお客様が機械を最大限に活用し、人材不足や過当競争市場、気候・環境基準の厳格化など、前例のない今日の課題に対応できるようになるのです。同時に GEA では研究開発から販売、サービスにいたるまで、さまざまな分野で効率を高めてイノベーションを促進し、データ主導の意思決定をサポートするため、自社の従業員全体の生産性を向上させる生成 AI ソリューションを積極的に模索しています。

GEA の機械の「スマート化」

GEA の機械の効率と環境性能の向上は GEA の気候戦略の目玉であり、同社ではこれらの機械をこれまで以上にスマートかつ持続可能なものにするため、AI を活用することに余念がありません。GEA OptiPartner ソリューションは最大限の生産性を実現するよう設計されており、お客様に「フルサービス」のプロセス最適化とメンテナンスパッケージを提供します。スマートなソフトウェアと自動化を組み合わせることで、手動介入の必要性を減らしながら、リアルタイムでプロセスパラメータを調整することができます。オートパイロットのように機能する GEA OptiPartner により、ばらつきが低減されるため、機械が最大出力に近い状態で稼働できるとともに、オペレーターはプロセス全体を完全に把握できるため、他の作業に集中できる時間が増加します。

GEA OptiPartner を噴霧乾燥（液体ミルクから粉ミルクを製造するプロセスなどに使用）に使用することで、エネルギー効率が平均8%向上します。噴霧乾燥のエネルギー集約的な特性を考えると、これはドイツの一般家庭200世帯の年間エネルギー消費量に相当し、大幅なエネルギー節約につながります。GEA OptiPartner ソリューションは ISO 認証も取得しており、TÜV Rheinland による認証を受けているので、GEA の Add Better ラベル（グリーンラベル）が貼り付けられています。

「GEA OptiPartner は、プロセス設計に関する幅広い知識とお客様個々の運営活動に対する理解を活用した、サービスとしてのプロセス最適化に向けた進化を体現しています」と話すのは、GEA デジタルソリューションのプログラム管理責任者を務めるハッサン・ヤズディ博士です。「改善すべき分野の特定、予定外のシャットダウン削減、プロセス最適化チームの一員としての活動が可能となり、GEA が製造工程における真のパートナーとなることができるのです」と言葉を続けます。

現在廃水処理に導入されている GEA Intellicant は、デカンタのデジタル化における GEA の画期的な技術であり、AI を搭載したクラウドベースのデジタルソリューションとして、現在すでにお客様に提供されています。このシステムはセンサーパッケージと仮想マシンオペレーター（VMO）として有名な GEA ソフトウェアで構成されています。センサーパッケージは3つの重要なプロセスパラメータをリアルタイムで監視。このパラメータにあたるのが廃水取込口の固形物濃度、脱水液（遠心分離水）の濁度、脱水汚泥（ケーキ）の乾燥物質です。データはこれらの「感覚器官」から「頭脳」に該当する VMO ソフトウェアに送られ、VMO ソフトウェアが入力されたデータに自動的かつインテリジェントに反応するようになっています。

デカンタに流入する下水汚泥の構成は常に変化するため、デカンタでは最適な性能を実現するために継続的な調整が必要となります。「GEA Intellicant により、さまざまな条件下でデカンタを常に最適な状態で運転できるようにするという、廃水プラントの大きな問題が解決します。これは手動ではほとんど不可能なことなんです」と、機械工学士であり、現在は GEA のデジタル製品部門のコマーシャルプロダクトマネージャーを務めるクリスティアン・シュラム氏は説明。

GEA Intellicant はドイツとデンマークの廃水プラントにおいて、汚泥脱水で大幅な効率向上を達成し、廃棄物を最小限に抑えてコスト効率を改善するのに役立っています。「GEA Intellicant を使用することで、自治体の浄水場（人口12万5000人に相当）では、下水汚泥の量を年間約400トン削減できます。環境に良いだけでなく、処分費用も年間6万ユーロ削減できるのです」とのことです。

GEA InsightPartner Brewery ソリューションは、AI がリアルタイムの応答性と柔軟性を可能にするというもう一つの例です。醸造において、GEA InsightPartner はリアルタイムのモニタリングソリューションに予測 AI 要素を統合することで、オペレーターに最適化のための提案を提供します。

1回の醸造が終わるのを待ってから次回醸造のための調整を行うのではなく、醸造の途中でも、麦汁が沸騰する際のエネルギー回収を微調整したり、エネルギー貯蔵システムの不均衡を修正したりと、オペレーターがプロセスを改善できるようになるのです。GEA で製品開発・設計・研究部門のシニアディレクターを務めるマーク・シュネーベルガー博士は、「ここでも、AI が提供する応答性により、「レシピベース」から柔軟な条件醸造へと、アプローチを大きく変えるための道が開かれるのです」と話します。

高度な分析と見やすいダッシュボードが魅力の GEA InsightPartner Brewery を使用することにより、醸造業者はデータ間の因果関係や相関関係を理解できるようになります。従来型の醸造所データに加え、このソフトウェアではプロセスサイクルにおけるエネルギー消費量と熱回収に基づく持続可能性のパフォーマンス指標も分析できます。これまでのところ、ユーザーからは5～8%の生産性向上が報告されています。

GEA では、北アイルランドに拠点を置く農業関連企業でパートナーの CattleEye と協力し、牛の跛行を迅速に検出・治療する AI 搭載型ソリューションを提供しています。CattleEye は搾乳システムの誘導型出口上部に設置されたカメラで構成されており、搾乳パーラーから出る牛を1頭ずつ撮影・記録するようになっています。牛の移動パターンが関連ソフトウェアによって分析され、不規則性が評価されて、システム内の牛に1頭ずつにモビリティスコアが付けられるのです。酪農家はアプリを使用することにより、治療が必要な病気や跛行の牛を素早く特定することができます。

「蹄病とそれに伴う跛行は、乳牛の死亡原因の中でも3番目に多いもので、酪農場全体にとって大きなリスク要因となっています」と説明するのは、ホルガー・ジークヴァルト（GEA Farm Technologies デジタルソリューション・サービス担当副社長）です。「CattleEye を使用することで、GEA のお客様は AI を活用して牛群の蹄の健康状態をより詳細に把握し、適切な対策を講じることができます。こうすることで酪農場の収益性が向上するだけでなく、より持続可能な経営が可能になります。家畜が全体的に健康になり、長生きするようになるのです」

基礎固め

廃水処理、食品、飲料、酪農といった重要な分野において、個々の AI ソリューションがすでにお客様のもとで真価を発揮している現在、GEA は AI をより幅広く自社の機械に統合できるよう迅速に対応しています。2024年1月、GEA は遠心分離機向けの新しい制御システム GEA X Control を発表。このシステムにより、データ収集・解析がより迅速かつ簡単になり、カスタマイズされたソフトウェア機能や自己学習・最適化機能への道が開かれます。GEA X Control により、最新のマイクロコントローラーとプロセッサー技術を活用して新たなレベルのコネクティビティが実現されるので、ユーザーはプロセスをより迅速かつ効率的に変化する市場ニーズに合わせて調整できるようになります。このソリューションは、乳業ならびに再生可能エネルギー産業で使用される一部のセパレーターとデカンタでご利用いただけます。

GEA の生成 AI：話題にとどまらない実力

世界ではまだ、ChatGPT と生成 AI により、私たちの学習、仕事、製造方法が永遠に変わるだろうと騒がれています。最近のマッキンゼーによる調査では、GEA の機械を未来に駆り立てるエッジ/クラウド AI サービスなど、従来型 AI が今後最大の経済効果をもたらすことが示唆されています。一方で、生成 AI はテキストや画像の生成にとどまらず、企業内部で著しい「トップレベル」の利益をもたらすと期待されています。

「GEA の競争力を確保する上で、生成 AI は極めて重要な役割を果たしています」と、GEA で最高デジタル責任者を務めるトム・エルスナー氏は説明します。「GEA は AI を活用したソフトウェア開発、機械のジェネレーティブデザイン、インテリジェントな技術文書、販売・サービスプロセスの再定義といった分野において、生成 AI によってもたらされるチャンスをものにしようとしています」

生成 AI の潜在能力を開花させるため、GEA では OpenAI の ChatGPT と Microsoft の Azure OpenAI Service をベースにした独自の全社的チャットボット GEA BetterBot AI を開発しました。2023年に発売されたこの GEA BetterBot AI には GEA の社内データが入力されており、GEA Cloud 上で安全に作動します。そのため、従業員は機密データ流出の心配なく、数秒以内に GEA の関連情報を引き出すことができます。「このチャットボットを使用することで、お客様からのサービス要請に迅速に対応したり、マーケットインテリジェンスデータにアクセスしたり、マーケティング活動をサポートしたりしやすくなるのです」と同氏は言葉を続けます。

従業員がチャットボットの「コミュニケーションスキル」を身につけることができるよう、GEA アカデミーではプロンプトエンジニアリングのチュートリアルを開発。このアカデミーでは、デジタル製品開発から電子商取引のスキル、データサイエンス技術、アジャイルプロジェクト管理にいたるまで、数々の学習機会を提供しています。

AI の違い

従来型 AI と生成 AI 双方における進歩がマスコミに大きく取り上げられ続け、世界中の CEO が開発に遅れないよう必死になっている中、GEA はこうした誇大広告を一刀両断し、機械知能をエンジニアリングの日常業務に統合するための具体的な措置を講じています。製品開発やマーケティング、サービスプロセスの最適化から、GEA の機械への強力な最新デジタルソリューションの装備、さらにはセンサー技術、エッジコンピューティング、インテリジェント自動化といった新境地の開拓まで、GEA は AI を活用した標準化や一貫性、効率性、そして AI なしでは到達が困難な実行速度レベルを実現しています。気候危機がヒートアップし、あらゆる利害関係者からの圧力が高まる中、GEA は AI がいかに GEA とお客様に真の違いをもたらし、より良い世界のためのエンジニアリング支援に活用できるのかを実証しています。