脱炭素化 - ヒートポンプ台頭の重要な原動力

Decarbonization - the key driver behind the rise of heat pumps

ヒートポンプに対する当初の関心は操業コストの節約によるものでしたが、現在では排出量の削減がこの技術の主な原動力となっています。ここでは、ヒートポンプ技術の隠れたチャンピオンとして、従来の用途や地域暖房でヒートポンプを使用している施設において、GEA がいかに CO2 排出量削減を目指す取り組みの先頭に立っているのかをご説明します。

国際エネルギー機関(IEA)によると、暖房のほとんどが化石燃料の燃焼によるもので、世界のエネルギー消費量の半分以上を占めているとのことです。歴史的なパリ協定で定められた、産業革命以前に比べて地球温暖化を1.5°Cに抑えるという野心的な目標達成のためには、エネルギー効率の高いヒートポンプのような技術がより大きな役割を果たす必要があります。ひいては、それが現在そして未来の世代にとって、より良い世界の実現につながるのです。

ヒートポンプ – 持続可能な選択

ヒートポンプの作動原理は従来の冷蔵庫とよく似ており、単に冷却して余分な熱を浪費するのではなく、その熱を回収してアップサイクルできるようになっています。このアップサイクルによって加熱コストを大幅に削減し、化石燃料への依存度を下げることができるのです。そのため、大規模に採用すれば、特に食品・飲料業界において、経済的にも環境的にも大きなメリットを得ることができます。それ以外の用途では、地域社会に地域暖房による恩恵がもたらされています。

ケトルでお湯を沸かすという単純な作業にどれだけの熱が必要か考えてみてください。従来の発熱方法(ガスボイラーなど)では、最新のヒートポンプの10倍もの電力が必要となります。これを毎日何トンもの加工食品を生産する巨大工場や、地域暖房ネットワークに含まれる数千軒にもおよぶ住宅や公共施設に当てはめてみると、その潜在能力の大きさは明らかです。食品加工工場の場合は、熱処理とその後の冷却が欠かせません。この組み合わせこそが、ヒートポンプ設置のメリットを最大限に引き出してくれます。

ヒートポンプは効率が高く保守が簡単なため、短期間で投資費用を回収することができ、数十年にわたるライフサイクルの中で利益を拡大していくことができます。化石燃料に代わる加熱方法として使用することにより、地球に有害なCO2排出量や、地域に有害なNOx排出量をほぼ完全に抑制することができるのです。

GEA のヒートポンプ技術を採用すると、業種や使用用途に関係なく、省エネを実現できるというメリットがあります。地域暖房スキームにおいては、ヒートポンプからベースとなる熱負荷を得ることができるほか、調整可能な熱源としても重宝します。反応時間が短いので、大規模ネットワークに最適です。また、電力供給業者の要請に応じて負荷を調整することができるスマートエネルギーシステムにより、電力系統を保護してくれるという効果もあります。 

 

自然冷媒

GEA はまた、アンモニアなどの自然冷媒を使用することで、より環境に配慮した対応を取ることができるようになりました。当社では1910年に初めてアンモニアコンプレッサを導入して以来、自然冷媒を使用しています。お客様がすでにフッ素系温室効果ガス(Fガス)システムを使用されている場合、GEA では自然冷媒の採用や自然冷媒への切り替えを積極的にお勧めしています。フッ素系温室効果ガスは、その有害な性質から、中期的にも法的規制の対象となったり、使用できなくなる可能性が高いとされているためです。実際、R22やR404aのようなガスはもうほとんど使用されていません。 

食品・飲料加工業界へのポンプ導入 

1850年代にオーストリアの湿地帯から掘り出した塩の乾燥に使用されていたヒートポンプは、それ以来大きな進歩を遂げています。今日では、食品、乳製品、飲料業界の脱炭素化と操業コストの削減において、アンモニアヒートポンプの能力の高さが証明されています。

• Mars, Inc. は言わずと知れたチョコレート、チューイングガム、ミントとフルーツ菓子製造の世界的リーダー企業ですが、GEA のヒートポンプソリューションにより、世界で最大規模のチョコレート工場であるオランダのウェフヘルに位置する施設のエネルギーとCO2削減に成功しました。このヒートポンプの設置により、チョコレート工場のカーボンフットプリントが削減され、Mars 社が目標とする持続可能性の実現に貢献しています。詳しくは Mars Wrigley の事例の全文をご覧ください。

アイルランドで2番目に大きな液体乳プロセッサ Aurivo では、GEA の新しい液体プロセスシステムと最先端の省エネ冷凍・ヒートポンプシステムを含む数百万ユーロのアップグレードにより、キリーゴードンの設備における二酸化炭素排出量を80%削減することができました。このプロジェクトの成功によって GEA 独自の複合加工と加熱・冷却アプローチの利点が浮き彫りになり、アイルランドの持続可能エネルギー局(SEAI)からエネルギー効率設計卓越性(EXEED)認証を授与されています。

Intermalt
はベトナム南部に位置する Interflour 社の製麦施設ですが、エネルギー消費量の大幅な削減に成功しました。GEA のヒートポンプによって冷却工場からの廃熱がアップグレードされ、焙焼に必要な空気を加熱するために送られています。この統合ソリューションにより、年間約2,000トンのCO2が削減されたのです。これにより、Intermalt 社は、環境に配慮した事業運営を行いつつも、競争力のある価格で高品質の麦芽を供給できるようになっています。

Mars chocolate production facility

Mars, Inc. では GEA アンモニアヒートポンプ設備が同社の目標とする持続可能性の実現に貢献しています。

地域暖房の浸透

現代の効率的な地域暖房システムは、わずかな電力(再生可能エネルギーが理想)を投入するだけで、大気中や地表、工場、地下鉄網、浄水場など、さまざまな場所から熱を発生させることができようになっています。発生した熱は最大95°Cまで上昇させたあと、近隣の暖房/給湯設備、あるいはその双方に直接供給することができます。

スウェーデン南部の都市マルメでは、港付近の下水処理場とゴミ焼却場の隣に GEA の10 MW ヒートポンプが4台設置されています。これらのポンプによって現在約10万世帯の総エネルギー消費量の8%がまかなわれており、毎年5万トン弱のCO2が削減されているのです。地域暖房は人口密度の高い地域で最も効果を発揮しますが、この事例はそれが必須条件ではないことを示しています。 

GEA のヒートポンプ技術は、ロンドン中心部のバンヒル熱電ネットワークプロジェクトでもユニークなソリューションの中核を担っています。GEA ヒートポンプソリューションは、ロンドン地下鉄の廃熱を再利用することで、より環境に優しく安価な暖房をイズリントンの1350世帯と学校、さらにはレジャーセンター2カ所に供給するのに貢献しています。詳しくはバンヒル 2 エネルギーセンターの全文をご覧ください。

イングランド北東部に位置するゲーツヘッド
では、氾濫した廃炭鉱の水から回収した自然熱を部分的に利用しています。ここでは水温を15°Cから80°Cまで上昇させるため、2台の 3 MW GEA アンモニアヒートポンプが使用されています。こうして得られた温水により、この地域の何百世帯もの家庭や公共・民間の建物に熱が供給されているのです。 
GEA ammonia heat pump plant at Gateshead

ゲーツヘッドの GEA アンモニアヒートポンプ設備は、氾濫した廃炭鉱の自然熱を利用しています。

ヒートポンプに切り替える理由とは?

  1. エネルギー消費量の削減。ヒートポンプソリューションは、エネルギー効率の高い冷凍システムと組み合わせても、単独でも、加熱性能を大幅に向上させることができます。
  2. 操業コストの削減。化石燃料を使用した加熱システムを高効率のヒートポンプに置き換えることで、操業コストを下げることができます。
  3. カーボンフットプリントの削減。化石燃料への依存度を下げることができるので、ヒートポンプの導入によりゼロエミッション目標の達成により近付きます。
  4. 目標とする持続可能性の実現。ヒートポンプソリューションは将来を見据えた投資であり、特に二酸化炭素を大量に消費する技術が規制によって段階的に廃止されていく中、その効果は絶大です。
  5. 共通の認識。余分な熱はどこにでも存在し、放出には通常多くのコストがかかります。ヒートポンプは取り込んだ熱を有用な温度まで上昇させるので、同じ効果を得るために何かを燃やす必要はありません。

温暖化する地球を「熱で冷却」

IEA によると、すべての国が炭素削減の誓約を履行した場合、世界の気温は産業革命以前より約1.7°C上昇するとのことです。

しかし、これは純粋に目標を掲げたというよりも、各国が政策を実行することを前提にしています。これは6つの気候シンクタンクが、世界各国政府の気候政策に関するあらゆる側面を調査してまとめた新しい報告書『The State of Climate Action 2023(気候変動対策の現状 2023年)』の結果なのです。 

最近のその他の研究では、再生可能エネルギーの拡大を含め、世界中でグリーン技術の導入が急速に加速していることが判明していますが、この報告書には明るい材料はほとんどありません。抜本的な対策を講じなければ、1.5°C以内に収まる見込みは完全に遠のいてしまうだろう、と著者は警告しています。

ひとつ確かなのは、あらゆる種類の排出量を削減するという目標は野心的であるということです。GEA はエネルギー使用量の削減、有害物質の排出量削減、温暖化する地球の冷却をサポートするヒートポンプ技術のパイオニアであることを誇りに思っています。これは当社が「Engineering for a Better World(より良い世界のためのエンジニアリング)」を実践し、目標とする野心的な持続可能性実現のために行っている取り組みのひとつにすぎません。

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