脱炭素産業、一度に一つのヒートポンプを設置

2022年9月21日

工業の脱炭素化と1台のヒートポンプ設置を同時に実現

熱は、-40℃でも+140℃でも熱です。熱を無駄にすると、お金が無駄になるだけではなく、数多くの工業プロセス、特に加熱と冷却の両方を必要とするプロセスの二酸化炭素排出量が増大します。エネルギー効率が高いヒートポンプは早くも、ドライブにおいてカーボンニュートラルな将来のための最適なテクノロジーになろうとしています。このテクノロジーは、産業界や都市などにおいて、これまでになく厳格になっている環境規制の順守、それぞれの持続可能性目標の達成、操業コストの削減に貢献しています。

世界中で気候変動が差し迫った問題となっています。この問題は歴史的に有名な2015年気候サミットで非常に明瞭になり、その結果、温室効果ガス排出量の削減と1.5℃未満の気温上昇制限を目指すパリ協定が採択されました。欧州連合は欧州グリーンディールを打ち立て、気候対策に関して世界をリードこと、そしてさらに重要な点として、明確な目標を設定することを約束しました。欧州グリーンディールでは、2030年までに温室効果ガス排出量を半減させることと、2050年までに実質ゼロ炭素ゾーンになることも目標に掲げています。

これは些細な課題ではなく、国際エネルギー機関(IEA)によると、世界の最終エネルギー総消費量の半分以上を熱が占めており、その熱の大半が化石燃料から生み出されています。したがってこれらの壮大な目標を達成するには、熱の脱炭素化を大幅に加速させる必要があります。EU は、温室効果ガス排出量を削減するために確立した欧州 F ガス規制に従って、冷媒としてよく使用されているフッ素化ガスの段階的な使用停止も進めています。

法律の増加、技術的進歩、環境への影響を緩和したいという希望が相まって、製造業者が事業戦略を脱炭素化戦略に結びつけるために必要な推進力が生まれています。食品製造業者は、早い段階から温室効果ガス排出量の削減に取り組んでおり、例えば製造工程にヒートポンプを導入した結果として、すでに経済と環境の両面で多大な恩恵を受けています。これは特に、前処理時と後続の冷却に加熱を必要とする工場のケースです。

産業界のひそかなチャンピオン: ヒートポンプ

B2B(企業間)と B2C(企業・消費者間)の両方で応用されているヒートポンプは、最初は1850年代にオーストラリアの湿地帯から掘り出した塩の乾燥に使用されていましたが、それ以来、大きな進歩を遂げています。ヒートポンプの地域暖房と家庭での使用はすでによく知られていますが、かつてないほど厳格な環境規制の順守、二酸化炭素排出量の削減、操業コストの削減に慌てて取り組もうとしている製造業者にとって、ヒートポンプは早くも最適なテクノロジーになっています。

ヒートポンプは、建物や工程から出た再生可能エネルギーや廃棄エネルギーを変換して温熱を供給します。例えば、冷却中には冷凍システムの復水器から熱が排出されますが、この熱は単純に環境に放出されます。ヒートポンプはこの有価資源を捕らえて昇温し、他の製造目的に適した熱を作ります。

ヒートポンプを冷却ユニットに組み込めば、冷却と加熱の両方が可能になり、1回限りの使用が連続サイクルへと変わり、エネルギーコストが30%以上も低下します。食品と乳製品と飲料の各業界内で、エネルギー使用量の60%以上が加熱と冷却に起因していることを考えると、これは大幅な節約になります。

Mars チョコレート製造施設

オランダのウェフヘルにある Mars チョコレート製造施設での GEA ヒートポンプの設置。このカスタマイズされたソリューションでは、冷却ユニットから使用不能な低温熱を抽出・昇温して水の加熱に再利用する GEA ピストン圧縮機を採用しています。(写真提供: RCC K&L)

CO2 排出量と冷媒排出量の削減

フッ素化ガスは徐々に使用停止に向かっており、自然冷媒、特に環境に優しい冷媒であるアンモニアの人気がさらに上昇しています。アンモニアは入手しやすく、安価で、地球温暖化とオゾン層破壊に全く影響しません。

アンモニアは、食品加工工場、飲料業界、乳製品業界、さらには醸造所や冷蔵倉庫でも広く使用されています。コンプレッサ技術の改良のおかげで、アンモニアヒートポンプは現在、さらなる昇温を実現しています。これにより食品・飲料・乳製品業界での使用をさらに拡大させるための道が切り開かれました。廃熱を再利用して昇温して製品の洗浄・浄化・乾燥に使用し、水を加熱して浄化、加工、殺菌に使用することができます。

従来は、これらの業界ではボイラーを使用して製品の調理や低温殺菌を行っていました。製品はその後、再び冷却するために冷蔵されるのですが、冷蔵プロセスから出る熱は温度が低すぎて再使用できなかったため、大量のエネルギーを無駄にしていました。ヒートポンプは廃熱の温度を最大90℃以上まで上昇させることができるので、廃熱を循環に戻すことができます。つまり、化石燃料ボイラーの使用廃止が進めば、熱の再生成やリサイクルが可能になり、CO2 排出量が大幅に削減(多くの場合50%以上)されるのです。さらに、グリーン電力を使用すればこれらの CO2 排出量をゼロまで削減できます。

カスタマイズされたソリューションが食品業界で大躍進

「GEA の産業用ヒートポンプの消費電力は 300 kW~10,000 kW なので、洗浄用の温水から都市全体の地域暖房までのあらゆる用途で使いこなせます。」と説明するのは、GEA Refrigeration Technologies ヒートポンプ部製品マネージャー ケネス・ホフマン。「しかしどの用途も難しく、各用途に合わせたアプローチが必要になります。当社は、プロセスに関する幅広い知識と専門技術を統合型の加熱・冷却ソリューションに盛り込むことができる点で有利です。私たちは、熱源の安定と恒久的な可用性を確保できる方法ですべてを設計しているので、廃熱の使用を最適化できます。」

通常、ガスボイラーを搭載した従来の設備は、実際にプロセスで必要になる熱媒体温度よりもはるかに高い温度を想定して設計されているので、熱負荷計算が不正確になり、そのために不要なエネルギー廃棄が発生します。ヒートポンプシステムの統合には、必須温度の総合分析と適切なプロセスパラメータの評価が必要ですが、初期設計の精度が高くなるほど、エネルギーの節約量が多くなるので、1℃が重視されます。初期コストを低く抑えようと、温度差が極めて大きい小型のパイプを使用するよりも、ヒートポンプに投資した方が継続的な節約を毎日実現できます。

どの用途も難しく、各用途に合わせたアプローチが必要になります。当社は、プロセスに関する幅広い知識と専門技術を統合型の加熱・冷却ソリューションに盛り込むことができる点で有利です。」- GEA Refrigeration Technologies ヒートポンプ部製品マネージャー ケネス・ホフマン

- GEA Refrigeration Technologies ヒートポンプ部製品マネージャー ケネス・ホフマン

「当社は、時には数十年のスパンで、加工業のお客様とのすばらしい関係を維持しています。これらの関係の多くに当社が提供した冷蔵設備が貢献しています。その根底には当社のルーツと専門技術があるのです。」オランダの GEA Refrigeration Technologies の冷凍エキスパート マールテン・ゲレンズは言います。GEA Refrigeration Technologies UK の技術営業部長 ロバート・アンスワースはこう付け加えます。「私たちはお客様と協力して、エネルギー節約の実現や CO2 排出量の削減などといったお客様の持続可能性目標の達成に取り組んできます。食品・乳製品・飲料分野でのヒートポンプの利用は、食品の製造と冷凍において過去最大の躍進を遂げようとしています。

ビジネスの成長と持続可能性: 表裏一体

IEA は、持続可能性目標を達成するためには、2030年までに、ヒートポンプや太陽熱による加熱などのクリーンエネルギー技術のシェアを新たな加熱設備の販売の4分の1以上に増大させる必要があると述べています。ヒートポンプ技術は、それが使用される業界や利用の程度に関係なく、エネルギーとコストの節約を実現できます。小さな郊外型住宅の冷暖房などの基本的な処理から、地域暖房に関するスーパースマートなゼロ排出戦略や大規模な食品製造プラントでの中心的な役割までこなせます。GEA はさらに、各プロセスを分析して効率化とコスト節約を強化する機会を明確にすることで、製造業者が自社の工場を総合的に見ることができるように貢献します。このアプローチまたは提案(当社では GEA の総合的なエンジニアリングソリューション (Nexus)と呼んでいます)には、多くの場合、廃熱を捕らえて再利用するヒートポンプの統合が含まれます。この統合は数多くの製造環境で大量に実施されています。

食品・乳製品・飲料分野でのヒートポンプの利用は、食品の製造と冷凍において過去最大の躍進を遂げようとしています。- GEA Refrigeration Technologies UK の技術営業部長 ロバート・アンスワース

- GEA Refrigeration Technologies UK の技術営業部長 ロバート・アンスワース

GEA ヒートポンプ技術によりベトナムの麦芽製造工場は常に目標を達成

GEA ヒートポンプ技術によりベトナムの麦芽製造工場は常に目標を達成

気候が穏やかな地域では、大気温度で麦芽の発芽を誘発できます。しかし温暖で湿度の高い地域では、空気を適切な温度まで冷却する必要があります。そして後の焙焼プロセスでは、発芽した麦芽を乾燥させるためにより高い温度が必要になります。これがエネルギー集約度の高いプロセスになるのはそのためです。Interflour 社が所有し運営しているベトナムの拠点 Intermalt は2017年に開業しました。Intermalt は冷却について GEA と協議した結果、自社の麦芽製造プロセスに GEA ヒートポンプを導入することも決定しました。このヒートポンプにより、冷却プラントからの廃熱がアップグレードされて、焙焼工程に必要な空気を加熱するために送られます。この統合ソリューションで年間約 2000t の CO2 を削減でき、これは環境にも Intermalt の収益にも有利な点です。
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